戸惑い
扉を開けたユールリアは、アレクシアがカズラに寄り添っているのを見て微笑んだ。
「あら、私はお邪魔だったみたいね」
アレクシアは穏やかな笑みを浮かべた。
「いいえ、そんなことはありませんわ。……もうすぐお茶会が始まります。行きましょう、カズラ様」
「いえ、僕は今日欠席します。公爵夫人にも、そう報告していますから」
「……そうですか」
アレクシアが笑みを深める。
「私はどうしても出席しなければなりませんから、失礼いたしますわ」
彼女はそう言って入り口に向かう。ユールリアは慌てて横に避けて、彼女の通り道を開けた。すれ違う瞬間に彼女が呟いた言葉が、ユールリアの耳に届く。
「あなたの勝ちよ。おめでとう」
ユールリアは目を見開いて彼女の腕を掴んだ。
「……何か?」
アレクシアが振り返る。その瞳は涙で滲んでいた。ユールリアは真剣な表情で告げた。
「カズラくんに何を言われたのか知らないけど、彼と私はただの幼馴染よ。今は何の関係もない赤の他人。だから何も諦めなくていいわ。私も応援するから……」
「……そう。そういうことなのね」
アレクシアが涙を指で拭う。彼女は艶やかな笑みを見せた。
「カズラ様は悪くないわ。私が勝手に期待して、勝手に失望しただけだから。あなたに1つ、いいことを教えておいてあげる。彼はあなたが思うよりもずっと、諦めの悪い人なのよ。……私はそのことを知らなかったの。これはそれだけのことよ。あなたが悲しむ必要なんてないわ」
その言葉を残して、彼女は部屋から出ていった。ユールリアは首を傾げて彼女の背を見送った。カズラが苦笑を浮かべて口を開く。
「同じなんだよ。僕と王女様は。欲しい物が見つかれば、全力で手に入れようとする。それが分かっているから、彼女は自分から身を引いてくれたんだ。僕は困難であればあるほど達成しようとする男だからね」
ティルターシャがオスヴァルトを見上げる。オスヴァルトは笑って彼女の頭を撫でた。
「私が言ったとおりだろう? 姫様もカズラも、悪い人間ではない。大事にはならないと、私には最初から分かっていたさ」
ティルターシャが半目になる。ユールリアは呆れ顔で言葉を発した。
「確かに揉め事にはならなかったけど、何も起きなかったわけじゃないでしょ。オズはあれを見て、何とも思わなかったわけ?」
「何か問題があったか? 穏やかに会話していたように見えたが」
その言葉を聞いてカズラが笑う。
「まあ、大したことはなかったからね」




