君と
オスヴァルトは1人で部屋に入った。談笑していた少女たちが彼を見る。ティルターシャはそれを見て首を傾げた。
「オズだけ? あの男の子は?」
「入り口で声をかけたが、ここに来る気は無さそうだったな」
机の上に人数分のお茶を置いて、オスヴァルトが答える。アレクシアは暗い顔をした。
「やはり、私が迷惑をかけてしまったのかしら」
「違うわ。葛くんは、ただ拗ねているだけよ」
ユールリアがジト目で呟く。ティルターシャは不思議そうな表情で口を開いた。
「そうなの? 彼、結構大人っぽく見えたけど……」
「取り繕うのは得意なのよ。私が呼んでくるわ。ティルは王女様とここで待ってて」
ユールリアはそう言って席を立った。彼女が部屋から出ていったのを見て、アレクシアが小声で呟く。
「……あの女の子だったのね」
俯いたアレクシアの顔を、ティルターシャが覗き見る。アレクシアは微笑んでいたが、その横顔はどこか切なそうだった。
「カズラ様は私と一緒にいても、いつも別の誰かのことを考えていたわ。だから私も気になったの。カズラ様がそこまで一途に想う女性のことが。でも、それがまさか私より年下の女の子だったなんて。彼女とカズラ様はいったいどこで、どんな風に出会ったのかしら。あなたは、何か知っていて?」
アレクシアがティルターシャの方を見て問いかける。ティルターシャは言葉に詰まった。オスヴァルトが真剣な表情になって言葉を発する。
「それをお話するにはまず、姫様が聞いたこともないようなことを信じていただかなければなりません。それでもお聞きになりますか?」
「構いませんわ。オスヴァルト様が知っていることを、全て教えてくださいな」
アレクシアは迷わなかった。オスヴァルトは彼女の言葉に頷いて、話し始めた。
「カズラとユールリアが出会ったのは、2人がこの世に生を受けるより前のことだと聞いています。2人はここではない場所で知り合って、結婚したのだと。ユールリアはその時のことを過去のこととして割り切っていますが、カズラの方はまだ割り切れていないようで、今でもユールリアのことを考えているようです」
「……そう」
淡々と話すオスヴァルトの言葉を聞いて、アレクシアがため息をつく。
「カズラ様は私にとって最高の王子様でしたの。いつも優しくて、穏やかな方で。お父様もカズラ様のことを信頼していらっしゃるわ。王家の者以外は決して入れない宝物庫に、許可を出して入れるようにするくらいに。だから私、どうしてもカズラ様と結婚したくて……何度もお願いしていたんです。私の婚約者になってくださいと。……でも、そんな方がいらしたのなら……カズラ様が彼女のことを諦められるように、私、頑張らなければなりませんわね」
アレクシアの視線は扉の方に向けられている。ティルターシャはその冷ややかな目を見て怖くなり、彼女に気づかれないようにこっそりとオスヴァルトの腕を掴んだ。




