襲来
それは、公爵家が主催するお茶会の日のことだった。朝早く起きたユールリアは、視線を感じて振り返る。そこには庭に通じる窓があった。
「どうしたの、ユー?」
寝ぼけ眼のティルターシャが声をかける。ユールリアは窓を開けて周囲を見た。
「誰かに見られているような気がしたんだけど……誰もいないのよね」
「きっと気のせいだよ。いくら今日がお茶会の日だって言っても、こんな時間から来る人なんていないでしょ」
「……そうね」
ユールリアが窓から離れる。ティルターシャは彼女の手を引いて、洗面所に向かった。窓の外に人影が映る。その人影は窓から離れて、家の入り口に移動した。小さな手が扉を叩く。
「誰だ?」
オスヴァルトが扉を開ける。その人物は驚いて、扉に伸ばしていた手を引っ込めた。それは、ユールリアたちと同じくらいの年頃の少女だった。オスヴァルトはその子どもの顔を見て、目を丸くした。
「アレクシア王女様? まだお茶会まで、かなりの時間がありますが……どうされたのです?」
「お久しぶりです、オスヴァルト様。私はカズラ様にお会いしたくて、少し早めに来たのですけれど……お屋敷で公爵様にお聞きしたら、カズラ様はこちらにいらっしゃると仰られて……」
「カズラなら今、家にいます。呼んできましょう」
オスヴァルトが扉を開けたまま、家の奥に入っていく。王女は興味深そうに、家の中に視線を向けた。洗面所からユールリアとティルターシャが出てくる。2人は扉が開いていることに気づいて、そちらの方に視線を向けた。
「あ……」
王女は慌てて顔を引っ込めた。少女たちはそのことに気づいて、扉の方に近寄った。
「どうしたの? ユーのお友達?」
「ううん、私は会ったことなんてないけど……」
ティルターシャとユールリアが囁き交わす。王女はゆっくりと、彼女たちに近づいていった。
「初めまして。私は、このノアルミナ王国の王女。アレクシア・ローゼンフェルト・ノアルミナでございます」
「ローゼンフェルトって……」
「この家の名字だよね?」
顔を見合わせて首を傾げた少女たちに、王女は柔らかい微笑みを向けて告げた。
「そうですわ。私の母上は、ローゼンフェルト家の娘でしたの。父上は今のノアルミナ国王です。私はオスヴァルト様と血が繋がっていることになりますの。と申しましても、母上は傍流の娘。オスヴァルト様は本家の長男ですから、遠い親戚のようなものですけれど」
少女たちは驚きで声が出なかった。オスヴァルトがカズラを連れて戻ってくる。王女はカズラの姿を見て、嬉しそうな笑みを見せた。
「カズラ様……!」
カズラは苦笑を浮かべて言った。
「相変わらずですね、姫様は」




