パーティー(後編)
お揃いの服を着て、同じ物を食べる。それだけのことだったけれど、ティルターシャにとってはとても楽しいことだった。彼女はパーティーに出たことなどない。けれどそれは、彼女が思い描いていたパーティーに最も近い体験だった。
「僕も着替えてきたよ。一緒に踊ろう、ユールリア」
タキシードに見を包んだカズラが、ユールリアに向かって手を差し伸べる。ユールリアはそっぽを向いた。
「私は食べるのに忙しいの。追加の料理も来たし、出来たて熱々の物の方が美味しいもの」
「じゃあ食べ終わった後でいいから、付き合ってよ」
「食べた後に運動するとお腹が痛くなるから嫌」
「つれないなあ」
カズラはどこか嬉しそうに、ユールリアと話している。彼女は呆れ顔で彼を見ている。ティルターシャはそんな彼らを見つめて、幸せそうな笑みを浮かべた。彼女は料理を皿に取り分けて、壁際に立っているオスヴァルトのところに持っていった。
「オズも食べる?」
「いや、私は食べなくても生きられる。その料理はお前が食べるといい」
「でも、食べられないわけじゃないよね? だったら一緒に食べようよ。その方が楽しいもん」
オスヴァルトは苦笑を浮かべて、渡された料理を受け取った。
「そういうことなら貰っておこう」
ティルターシャは彼に渡したのと同じ料理を皿に持って、彼の隣に移動した。2人はその料理を食べながら、目の前で繰り広げられている会話に耳を傾けた。
「だいたい葛くんは昔から、行動が早すぎるのよ。今日だって急に来てパーティーをやろうだなんて言って。他の予定があることは考えなかったの?」
「予定といっても、明日に回せるものしかないだろう? それに、あの子はとても喜んでいるようだよ」
カズラがティルターシャの方を見る。ユールリアはため息をついた。
「そうね。ティルはこういうサプライズが好きだから。あなたはそのことが分かっていて、あえて何も知らせずに来たんでしょうけど」
「まあ、そういうことになるかな? ティルターシャは君の友人だ。友人が楽しそうにしているのなら、君も細かいことは言わないと思ったんだけど……」
「言いたいことは言うわ。当たり前でしょ。……ティルが笑ってるから、止めはしないけど」
ユールリアはカズラと目を合わせないようにしながら呟いた。怒りと呆れが混ざったその顔に、喜びと楽しさの色が見える。カズラはそんな彼女の横顔を見て、満足げな笑みを浮かべた。ティルターシャがユールリアに駆け寄って、彼女の手を引く。
「ねえ、ユーも一緒に食べようよ。この魚料理、すごく美味しいよ」
「……そうね」
少女たちは微笑みを交わして料理を取りに行く。そんな穏やかなパーティーは、日が落ちるまで続いた。




