欲しい物
それは少女たちがその家で暮らすようになってから、5日ほど経った後のことだった。公爵夫人が仕立て屋を連れて、4人が住む家の扉を叩く。カズラが彼女を出迎えて、応接室に案内した。
「今日はどうされたんですか?」
「あの子たちのために、ドレスを作ってあげたくて。ほら、この家には女の子が居なかったでしょう? だからドレスを仕立てる機会がなくて……実は少し寂しかったの。あの子たちは?」
「この時刻なら、書斎で本を読んでいる頃だと思いますよ。今、呼んできますね」
カズラはそう言って席を立った。公爵夫人は柔らかく微笑んで、部屋から出ていく彼を目で追った。彼はそれからしばらくして、他の3人を連れて戻ってきた。夫人は少女たちに笑顔を向けて、言葉を発した。
「私のお願い、聞いてくれるかしら?」
「ええ、私は構いませんけど……」
ユールリアは自分の後ろに隠れているティルターシャに目を向けた。ティルターシャは彼女と目が合うと、戸惑いながら口を開いた。
「ティルは、その……綺麗な服を見るのは好きだから、ユーの服を見てるだけでもいい?」
「……そうねえ。それじゃあ先に、ユールリアちゃんのドレスを仕立てましょうか。でも、ティルターシャちゃんがドレスを着てみたくなったら、いつでも言ってちょうだいね」
ティルターシャが無言で頷く。オスヴァルトが前に出て、夫人に向かって声をかけた。
「ドレスを仕立てるのなら、客室に移動した方が良いでしょう。こちらです」
夫人がその言葉を受けて立ち上がる。彼女は自分が連れてきた仕立て屋と共に別室に移った。ティルターシャは彼女が部屋から出たのを確認して、ユールリアに話しかけた。
「ねえ、ユーはドレスとか、作ってもらったことあるの?」
「そんなの、あるわけないでしょ。私が着てたのは、全部お母さんのお下がりだったもの。そんなことより、本当にいいの? ティルも綺麗な服、着てみたいっていってたでしょ?」
「だって……ティルには似合わないかもしれないし。それにね、あの人のこと、ちょっと苦手なの。ふわふわしてて、キラキラしてて、ティルが関わっちゃいけない人みたいで。あ、でもね、嫌いなわけじゃないんだよ。遠くにいるあの人を見てるのは、好きだから。……これ、あの人には内緒にしてね」
「それはいいけど……」
ユールリアは苦笑を浮かべた。
「あの人が近寄りがたく見えるのは、生粋の貴族だからよ。ティルが引け目を感じる必要はないと思うわ。ドレスを作ってくれるのだって、あの人が作りたかったからだと思うから……そんなに気にしなくていいんじゃない?」
「……そうかな」
「そうだよ!」
ティルターシャがユールリアと目を合わせる。ユールリアは笑って、ティルターシャの手を引いた。ティルターシャは抵抗せず、彼女に付いていった。




