性格的に向いてない
オスヴァルトは他の生き物と戦わない。争わない。その必要がないからだ。彼は見返りを求めない。彼にとって何よりも優先すべきものは自分の宝で、自分自身ではない。だからユールリアたちがいる部屋の扉を開けるまで、彼はカズラの宣戦布告を何とも思っていなかった。扉を開けた彼の目に飛び込んできたのは、ユールリアがティルターシャの手を掴んでカズラを睨みつけている様子だった。
「……何かあったのか?」
扉が開く音。オスヴァルトの声。それらに反応して、部屋の中にいる人々が入り口を見る。
「なんでもないわ。心配しないで」
ユールリアがティルターシャの手を離して言う。カズラは苦笑を浮かべた。
「それだけですか?」
オスヴァルトは困ったような顔をして口を開いた。
「そうだな。君が私のことをどう思っていたとしても、私は君のことを敵だと思えない。君は、ユールリアの感情を無視して自分の意見を押し通すような男ではないだろう?」
「……まったく」
カズラがため息をつく。彼は扉の側の壁に寄りかかって呟いた。
「予想はしていましたが、やはりあなたは人が良すぎる。ユールリアに危害が及ばなければ本気になれないというのなら、僕とあなたでは勝負にならない。僕はユールリアのことを、本気で愛しているのですから」
ティルターシャが不思議そうな顔をした。
「それなら、みんなで一緒にいようよ。ティルもユーのこと大好きだもん。4人で幸せに暮らせるなら、それが1番でしょ?」
「それはそうだけど、そういうことじゃないから……」
ユールリアが戸惑う。カズラはその様子を見て、楽しそうな笑みを見せた。
「僕は別に構わないよ」
「私も、ユールリアがそうしたいのなら付き合うが……」
オスヴァルトがユールリアの方を見ながら言葉を発する。ユールリアはどうしていいか分からず、カズラの方に視線を向けた。彼は穏やかな笑顔で話を続けた。
「まあ、ユールリアはしばらくの間、外に出ない方がいいだろうし……僕はオスヴァルトの部屋に泊まるから、大きな問題はないと思うよ」
「そう? それならいいけど……」
ユールリアはティルターシャの顔を見た。彼女はユールリアと目が合うと、首を傾げて言葉を紡いだ。
「ユーはティルたちと暮らすの、嫌なの?」
「嫌じゃないわ。……ティルこそいいの? 葛くんと同じ家で暮らしても」
「平気だよ。だってユーの友達でしょ?」
ティルターシャは楽しそうに笑っている。ユールリアはその顔を見て、仕方ないと言いたげな表情を浮かべた。




