それでもあなたは
「……仲良しだね」
ティルターシャが目を丸くして呟く。ユールリアは呆れたような顔をしていた。
「前世からの付き合いだからね。お互いに、知りたくもないことまで知ってるの。それだけのことよ」
「でも、ユーも覚えているんでしょ? その子と居た時のこと。どうでもいいことなら、思い出そうとしないよね」
「……そうね」
ユールリアが目を伏せる。カズラはそんな彼女に、穏やかな眼差しを向けていた。
「確かに私は、葛くんのことが好きだった。でもそれは昔の話よ。今の私は陽奈じゃない。ユールリアっていう別人なの。陽奈は1度死んだ人間。その記憶が残っているなんて、本来ならあり得ないことなんだから。葛くんは、そうは思ってないようだけど」
「僕は君と違って、生まれた時から記憶があったからね。まあ、それで良かったと思っているよ。僕は生まれてすぐに、実の親に捨てられたから。君のことを覚えていなければ、自ら死を選んでいたんじゃないかな?」
ユールリアがカズラを睨む。彼は素知らぬ顔で話を続けた。
「それに僕には生まれつき、特殊な能力が備わっていたんだ。君が何の能力も持っていないところを見ると、それは転生とは関係のないところで授かる力。この世界では魔法と呼ばれているけれど、それは僕たちが考えるようなものとは違っていてね。同じ能力を持つ人間は他にいない、唯一無二の力だ。君との思い出がなかったら、僕はこの力を悪用していたかもしれないよ」
「もう悪用してるじゃない。その力を使って、公爵家に取り入ったんだから」
「悪用じゃないよ。君も見ただろう? 公爵夫人のあの様子を。僕が介入しなかったら、彼女は本当に公爵家の力を使って君たちの旅を妨害しようとした可能性が高い。それを防いだんだから、少しは感謝してほしいなあ」
「それはオズのお母さんのためじゃなくて、自分のためだったんでしょ。感謝なんてする必要はないわ」
ユールリアが頬を膨らませてそっぽを向く。カズラは苦笑を浮かべて、その様子を見ていた。ティルターシャがユールリアに近づいて、小声で話しかける。
「やっぱり仲良しだね、ユーとカズラくん」
ユールリアが複雑そうな表情になる。ティルターシャは楽しそうに笑っていた。
「大丈夫。カズラくんが何を考えていたとしても、オズが守ってくれるから。ユーもそう思うでしょ?」
「……そうね」
ユールリアはため息をついて、ティルターシャの手を引いた。ティルターシャはその力に逆らわず、引かれるままに付いていった。少女たちはそのまま、カズラから離れた場所に移動した。カズラは無言で、その様子を見つめていた。




