おやすみなさい
「このお菓子美味しいね。オズのお母さん、料理もできるんだ」
ティルターシャは周囲の空気が変わっても気にせず、目の前にある菓子を食べて朗らかに笑った。公爵夫人がぎこちない笑みを浮かべて、彼女に向かって話しかけた。
「腕のいい料理人に手伝ってもらったから、私だけで作ったものではないけれど……気に入ったのなら、また作ってあげるわ。そんなことより、その他人行儀な呼び方は改めてくれるかしら? あなた達はオズの養子になるのだから、私の孫も同然。遠慮なく、お祖母様と呼んでちょうだい」
ユールリアはその様子を見て目を細めた。
「ありがとうございます。それではそのお言葉に甘えて、公爵のことはお祖父様。公爵夫人のことはお祖母様と呼ばせていただきますわ。それで、お祖母様。1つ、お願いしたいことがあるのですけれど……」
「なあに? 何でも話してちょうだいな」
「実は私、お祖母様が心配で心配で仕方なくて。よく眠れていらっしゃらないように見えますから。お茶会は早めに終わらせて、お部屋でお休みになっていただきたいの。詳しい話は、お祖母様がお元気になられてからでもよろしいでしょう?」
「……そう、ね……あなた、ユールリアちゃん、だったかしら? 約束してくれる? もうオスヴァルトを連れていかないって……」
「ええ、お約束しますわ。私の言葉だけでは足りないと思われるのなら、お祖母様の部屋を離宮が見える場所にお移しになるのはいかがかしら。そうすれば、窓から私たちの暮らしが見えて安心できると思います。お祖父様も、それが良いと思いませんか?」
「そうだな。気を使わせてしまってすまない。すぐに部屋を用意させよう」
公爵はそう言って使用人を呼びつけた。オスヴァルトがユールリアに近づいて囁く。
「本当にいいのか? 母上のあの様子では、使用人に言いつけて窓から離宮を見張らせるかもしれないが」
「それでオズのお母さんが休めるなら、私は構わないわ。私たちがオズを連れていったせいで、お母さんは夜も眠れないほど悩んでいたようだし」
ユールリアはそう言って微笑んだ。カズラが笑みを浮かべて、オスヴァルトの肩を叩く。
「それに見張らせるといっても、誰も外に出ないことを確認させるくらいだろうからね。離宮の中には本もあるし、植物が飾られた小さな温室もある。カードやボードゲームも揃っているから、暇を持て余すことはないと思うよ」
オスヴァルトは苦笑を浮かべて口を閉じた。公爵が夫人を連れて、屋敷の中に入っていく。ユールリアたちはそれを見送った後に、カズラの案内で離宮に向かった。




