お茶会
庭には白い机が置かれていて、その周りには同色の椅子が円形に並べられていた。
「綺麗なお庭。植物たちもとっても元気そうね。これ全部、オズのお母さんが育てたの?」
ティルターシャが興味深そうに周囲を見渡す。オスヴァルトが困ったような笑みを浮かべた。
「いや、この庭を作ったのは腕利きの庭師だ。母上は庭の手入れに関心がないからな」
公爵夫人が遠慮がちに声をかける。
「……ティルターシャちゃんは花が好きなの? 良かったら、何か摘んであげましょうか?」
「大丈夫! 花も草木も、地面から離れてしまったら生きられないもの。ティルは生きている植物を見てたいから、花は摘むより咲いてるのを見てる方が好きなの」
ティルターシャが慌てて首を横に振る。公爵はそれを横目に見ながら、ユールリアに向かって話しかけた。
「私はテオバルト・ローゼンフェルト。543代目のローゼンフェルト公爵だ。妻はナディヤ。今の王妃の姪に当たる。君は?」
「え、あ、ええと……ユールリアです。よろしくお願いします」
ユールリアは戸惑いながら頭を下げた。公爵は穏やかな笑みを浮かべている。
「君の隣にいるその娘さんは、精霊の子供かな?」
「はい。お父さんが木の精霊だったそうです。彼女の名前はティルターシャ。私の友達です」
「そうか。だからカズラは、庭の草木に隠れる場所に離宮を建てたいと言っていたのだな。君の友人が暮らしやすいようにするために。精霊の子は、自分が育ったのと同じ環境でないと落ち着けない。本当は彼女の故郷の木々を移植するのが1番良いのだが、おそらくそれは叶わないだろうからな」
ユールリアは目を見開いて、公爵の顔を穴が開くほど見つめた。公爵が不思議そうな顔をする。
「……どうした。私の顔に、何か付いているのかね?」
「あ、いえ……大したことではないんですけど、オズと似てるような気がして……」
「そうなのか? そんなことを言われたのは初めてだな」
「似ているのは顔じゃなくて、雰囲気というか……まあ、家族なんだから当たり前ですけど」
オスヴァルトが微妙そうな表情になって目をそらす。公爵は苦笑を浮かべて口を開いた。
「私たちは確かに親子だが、オスヴァルトの存在が規格外すぎて、周囲の人間から親子として扱われたことは1度もないんだ。だから、君のように真っ直ぐに家族だと評してくれる人間は珍しくてね。少し気恥ずかしくて、どう反応していいか分からないな」
「でも、実の子供なのは確かなんですよね。だったら、家族だと思うのは当たり前ですよ。公爵家と血が繋がってない私たちや葛くんを養子にして、家族として迎えてくれる家ですから。オズが家族なのは当然です。もっとも、家の外の人はそう思わないのかもしれませんけど……こういう話は他人がどう思うかじゃなくて、自分と大切な人がどう思うかで決めるべきですから」
ユールリアは満面の笑みで言った。公爵家の人々は少し複雑そうな顔をしていたが、それでも彼女の言葉を否定することはなかった。




