事情説明
「……って、私だけで決められることでもないけど。ティルとオズの意見も聞かないとだし……」
ユールリアが目をそらしたまま、小さな声で呟く。ティルターシャとオスヴァルトは、そんな彼女を微笑ましげに見ていた。
「ティルはいいよ。ユーと一緒に、ここで暮らしても」
「そうだな。私も、ユールリアがそうしたいのなら構わない。旅をしていたといえば聞こえはいいが、実際は当てもなく彷徨っていただけだからな」
「……うん、ありがとう。ごめんね。オズはせっかく家から出たのに、また戻ることになっちゃって」
ユールリアが俯く。オスヴァルトは穏やかな表情で言った。
「私が家を出たのは、両親から後継ぎを取って家を継いでくれと言われ続けたからだ。あのままでは、お前たちにも危害が及ぶと思ったからな。今はカズラがいて、彼がうまくやってくれるのだから問題ない。そうだろう?」
カズラは笑みを深めて頷いた。
「公爵家の後継ぎなら、もうレオポルトに決まっているよ。彼はオスヴァルトに勝てなかったことを気にして遠慮していたから、1から説明してあげたんだ。オスヴァルトは人間じゃないし、この世界で彼に勝つことは絶対にできないと。そうしたら彼も納得して、この家を継ぐと言ってくれたよ」
「だが、お前はどこでそのことを知ったんだ? ずっとこの国に居たのなら、そんなことを調べられる場所は……」
「王宮の宝物庫」
カズラは目を細めて、端的に告げた。オスヴァルトの表情が変わる。カズラは真剣な表情で話を続けた。
「別に、こっそり忍び込んだわけじゃないよ。どうしても調べたいことがあると頼んで、宝物庫に入れてもらったんだ。僕は王様に信頼されていたから、王家の正当性を証明すると言えば疑いを持たれることもなかった。そして王様に古書に書いてあったことを伝えて、王家に龍の血が流れているんじゃないかって言ったんだ。その証人は君だと告げたら、王様も納得してくれたよ。君の力が人間離れしていることは、この国の人間なら誰もが知っていることだったから」
「……でも、どうして? どうしてそんなに、オズのことを気にしていたの? あなたにとって、オズは1度顔を見ただけの人なのに」
ティルターシャが不思議そうな表情でカズラを見る。彼は柔らかな笑みを浮かべて、ユールリアに視線を向けた。
「彼は僕の恋敵だからね。どんな人物なのか、気になるのは当たり前だよ」
ユールリアがため息をつく。オスヴァルトとティルターシャはそんな彼女を見て、穏やかな笑顔になった。カズラは彼らに気づかれないようにしながら、真剣な目でオスヴァルトを見た。
(まあ、彼のことを気にしていた理由は、僕の能力が通用していなかったからでもあるけれど。それは今、言わなくてもいいことだしね)




