転生者と龍
「……ごめんね、ユー。思い出したくないことだったよね」
ティルターシャが目を伏せる。ユールリアはティルターシャに近づいて彼女を抱きしめた。そうして小声で呟く。
「いいのよ。ティルはなんにも悪くないんだから」
ティルターシャが俯く。ユールリアは彼女が落ち着くまで、ずっと側で寄り添っていた。部屋の外から、扉を叩く音がする。オスヴァルトが扉に向かって声をかけた。
「誰だ?」
扉が開く。そこにいたのはキルシュだった。彼女は扉を開けて、後ろにいた人物を部屋の中に入れた。ユールリアはティルターシャと密着した状態で、顔だけを動かして扉の方を見た。
「久しぶりだね、ユールリア。元気そうで何よりだ」
部屋に入ってきたのはカズラだった。ユールリアは半目になって言葉を発した。
「……葛くんもね。でもどうしたの? あなたは仕事で、手が離せないって聞いたけど」
「君が帰ってきているという報告を受けたからね。仕事を終わらせて、君に会いに来たんだよ」
「そう。悪いけど、葛くんに用があるのは私じゃなくてオズなの。ねえオズ、どう思う? 葛くんは龍なんかじゃないよね?」
「そうだな。特殊な能力を持っているようだが、私と同じ存在ではない」
オスヴァルトが淡々とした声音で答える。ユールリアはその言葉を聞いて微笑んだ。
「それが分かったのなら、もうここに用はないわね。また、3人で旅をしましょうか」
「それは難しいんじゃないかなあ。僕がオスヴァルトのことを大陸中に広めたから、行く先々で特別扱いされると思うし」
カズラが笑顔で横槍を入れる。ユールリアは渋い顔をした。
「……葛くん。手紙でも伝えたでしょ。いつまでも昔のことにこだわらないで」
「こだわってるわけじゃないよ。僕は君の笑顔が大好きなんだ。何度生まれ変わっても、君に出会えたのなら諦めたくない。君は僕の1番だから」
カズラは笑みを深めてユールリアに近寄った。ユールリアは呆れ顔でため息をつく。
「じゃあ、こう言えば納得してくれる? 私、好きな人がいるの」
「嘘は良くないよ、ユールリア。君はまだ、誰のことも愛していない。もちろん、オスヴァルトのこともね。そうだろう?」
ユールリアはカズラを見つめた。彼は真剣な目をしている。
「……相変わらず、押しが強いのね」
「こうしないと、君に意識してもらえないからね。大丈夫だよ。僕は君の意志を尊重するから。最後に君が誰を選んでも構わない。ただ、その選択肢の中に僕という人間を入れてほしいだけだ」
ユールリアとカズラが見つめ合う。先に目をそらしたのは、ユールリアの方だった。カズラはその様子を見て、満足げな笑みを見せた。




