説明
「ですが兄上。カズラが今、家にいないのは事実ですし……」
レオポルトが困ったような顔をする。オスヴァルトは椅子から立ち上がって言った。
「そういうことなら、私はユールリアとティルターシャを連れて西の客室に向かう。彼が帰ってきたら客室に案内してくれ」
レオポルトは黙って頭を下げた。オスヴァルトは2人の少女と共に、屋敷の奥に向かって歩いていった。レオポルトは机の上に残されたティーカップを見て苦笑した。
「まったく、お茶も飲まずに客室に籠もるとは。相変わらずの即断即決ぶりですね」
彼は使用人を呼んで、カップを片付けるように指示した。キルシュはそれを横目に見ながら手を振った。
「じゃあ、ボクたちはカズラさんにこのことを知らせてくるね」
その言葉を残して、彼女はトリフォと共に部屋を出た。彼女と彼はそのまま屋敷から出て、王宮へ向かった。王宮で仕事をしていたカズラは、訪ねてきた2人を見て微笑んだ。
「どうやら、うまくいったようだね」
「まあね。オスヴァルトは、カズラさんに会ったらまたすぐに旅に出るつもりのようだけど。カズラさんは、これからどうするつもりなの?」
「僕はまだ仕事が残っているから、しばらくは家に帰れないよ。彼にもそう伝えておいて。公爵夫妻には、子供たちと関わるときは慎重にと念を押しておいてね」
「それだけ? お姫様に何か伝言とかないの?」
カズラはキルシュの言葉を聞いて笑みを浮かべた。
「伝言は要らないよ。僕が直接会って、彼女と話をしたいから」
「それでいいの? ずっと待っていたお姫様が、カズラさん以外の男と一緒にいるのに」
「構わないよ。オスヴァルトの性別は男だということになっているけれど、彼は人間ではないからね。彼の本質は男でも女でもないし、人間に性的な執着を抱くこともない。彼はそういう存在なんだ」
「でも、彼はお姫様を大切にしているんだよね。だったら、彼女だけは特別なのかもしれないよ?」
「女としての特別ではないよ。彼にとって、ユールリアは宝なんだ。子孫繁栄はありとあらゆる生き物にとっての命題だけど、彼には当てはまらない。彼が最も優先するのは、自分だけの宝を守ること。彼に子供ができないのは、作る必要がないからだ。だから心配はいらないよ。彼とユールリアの関係は、人間の男女関係とは違うものだから」
カズラはそう言って笑みを深めた。キルシュとトリフォが呆気にとられたような顔をしている。少しして、キルシュが呆れ顔で呟いた。
「もしかして、カズラさんが全然焦ってないのって、オスヴァルトが恋敵にならないのを知ってたからだったりする?」
カズラは肯定も否定もせず、ただ笑っていた。




