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出会い

それは少女たちが約束を交わした、その数日後のことだった。外が急に騒がしくなる。ユールリアとティルターシャは手を取り合って、部屋の隅に避難した。外の物音がだんだんと大きくなっていく。大勢の人々が走り回る足音が聞こえる。ティルターシャが、小さな声で呟いた。


「精霊たちが騒いでる。あの男の人が人間を売ったり買ったりしてたこと、王様が知ってたんだって。今日が、捕まる日だったらしいの」


「それって、助けが来たってことでしょ? 良いこと、なのよね?」


ユールリアはティルターシャを見つめた。彼女は不安そうな顔で頷いた。


「ユーにとっては良い日だね」


「どういうこと? ティルも一緒に、行けるんでしょ?」


「ムリだよ。ティルは森の子供だから。人買いに売られた子供たちは親がいないから、行き場がないの。人間の子供なら教会で引き取ってもらえるけど、森の子を受け入れてくれる教会なんてないから……。だからあの人たちに見つかったら、ティルは1人で放り出されるの。今と同じだよ。人間を売り買いしてるのは、あの男の人だけじゃない。別の人間に捕まって、ユーとも引き離されて、ティルは1人になるんだ」


「なにそれ。そんなの、間違ってるよ」


ユールリアはティルターシャの手を引いて、部屋の扉に手をかけた。


「今なら、騒ぎに紛れて逃げられる。ティルが幸せになれる場所まで、一緒に逃げよう」


ユールリアはそう言って、扉を開けた。ティルターシャが目を丸くする。


「でも……そうしたら、ユーは幸せになれないよ」


「いいのよ。ティルが幸せになれないなら、私も幸せなんていらないから」


少女たちは目配せをして、同時に駆け出す。繋いだ手を離さないように、強く握って。屋敷は兵士に包囲されている。子供2人で、どこまで逃げられるかは分からない。それでも少女たちは、外を目指して走り続けた。2人の前に、鎧姿の騎士が立ちはだかる。


「捕まっていた子供か。どこへ行くつもりだ?」


「外よ。決まってるでしょ」


ユールリアはティルターシャを庇うように立って、不敵な笑みを見せた。


「そこを退いて。私たち、急いでいるの」


「そうはいかない。人買いに売られた子供の行き先は、決まっている。人間の子なら教会へ。それ以外なら……」


ユールリアは騎士の言葉を聞かずに、ティルターシャと共に彼の横をすり抜けた。


「急いでるって言ったでしょ。じゃあね、お兄さん」


2人の子供が走り去る。騎士は呆気にとられたような顔をして、2人のことを見送った。

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