旅の再開
「そこまでするかな、普通」
ユールリアが半目になってため息をつく。キルシュは苦笑を浮かべた。
「それだけ、お姫様のことを愛してるんだよ」
ティルターシャがユールリアの手を握る。ユールリアは笑みを浮かべてその手を握り返した。オスヴァルトは2人を微笑ましそうな表情で見ながら問いかけた。
「私はもう、行きたいところも行くべきところもない。お前たちがどこか別の場所に行きたいというのなら、私も付き合おう。そこの2人はどうする?」
「ボクとトリフォはカズラさんに頼まれて、お姫様の護衛をするために来たんだ。だから、お姫様が行くところについていくよ」
キルシュが笑いながら答える。トリフォは無言で頷いた。ユールリアとティルターシャが、顔を突き合わせて話し始めた。
「どうしよう。ティルは、どこか行きたいところとかある?」
「ユーと一緒に行けるなら、どこでもいいけど……」
「じゃあ海に出てみるのはどう? 船を用意すれば、簡単に出られると思うけど」
ティルターシャが目を丸くした。
「ユーは知らないんだろうけど、海は危険なところなんだよ。それに、船は川で使うための物だし……」
「大丈夫よ。こっちの川は広くて深いから、大きな船も通れるでしょ。そういう船をどこかで買えば、海に出ることもできると思うわ。オズがいれば、危険な目に遭うことはないしね」
「でも、船はどこから持ってくるの? ティルには船の買い方なんて分からないよ」
「それは、この人たちが何とかしてくれるわ。そうでしょ?」
ユールリアは、キルシュとトリフォがいる方向に視線を向けた。トリフォが自分の指に糸を巻きつける。
「船と燃料、そして食料だな。少し待っていろ。すぐに用意する」
トリフォはその言葉を残して去っていった。キルシュが笑って、それを見送る。ユールリアは彼女に、訝しむような眼差しを向けた。
「……ねえ、あの人のことだけど。1人で行かせちゃっていいの?」
「平気だよ。トリフォは糸使いだからね。目立つ武器は持ってないけど、アイツの糸はどんな物より役に立つんだ。……ボクとアイツは長い付き合いでね。カズラさんに出会うまで、2人組の暗殺者として生きていたんだ。ボクらは本来、そういう人間なんだよ。カズラさんがいなかったら、表に出ることなんて出来なかった。みんな、カズラさんのおかげだよ」
キルシュは遠い目をしていた。ユールリアとティルターシャは、戸惑った様子で彼女のことを見つめていた。オスヴァルトが彼女らに向かって声をかける。
「まずはテントに戻って、彼が帰ってくるのを待つべきだ。そうだろう?」




