世界のシステム(前編)
海の近くを歩いていた3人は、小さな洞窟を見つけた。洞窟の中は狭く、外から覗くだけで行き止まりだと分かる。
「ねえユー、ここってとっても不思議だよ。なんだか、すごく落ち着く気がするの」
ティルターシャが洞窟の中に入る。彼女は何もないはずの洞窟の中を、楽しそうに見て回っていた。
「落ち着くって……ただの洞窟でしょ? 何があるっていうの?」
ユールリアが洞窟の外から声をかける。ティルターシャは何かを考えるような表情になって、オスヴァルトの方を見た。
「お父さんが言ってたの。大陸の南には、世界と繋がる孔があるって。きっと、ここがその場所なんじゃないかな。だからオズがここに入ったら、何か分かることがあると思う」
彼女はそう言いながら洞窟を出た。オスヴァルトが笑みを浮かべて、洞窟の中に足を踏み入れる。彼はその瞬間に目を見開いた。
「……これは」
オスヴァルトが洞窟の中心で膝をつき、床に手を置く。彼が手を置いた場所から、白い光が波紋状に広がっていく。洞窟内に光が満ちて、オスヴァルトの姿を隠した。ティルターシャがユールリアの手を掴む。
「ほら見て。あの光、なんだか分かる?」
「ええと……もしかして、あれって……」
ユールリアは空を見上げた。光の強さは違う。けれどその色と温かさは、間違いなく太陽の光だった。
「あり得ない。だって洞窟の中だよ。天井ならまだ分かるけど、床が光るなんて……しかも、それが太陽の光だなんて、そんなこと……」
「そういうこともあると思う。ここは、どんな不思議なことも起こる可能性がある場所だから。それに、中にいるのはオズだしね」
少女たちがそんな会話をしている間に、洞窟の中を満たしていた光は消えていた。先に光が消えたことに気づいたユールリアが、洞窟の床に座ったまま動いていないオスヴァルトに話しかけた。
「ねえ、分かったの? 自分がどんな存在で、卵から生まれたのが何なのか」
「……いや、その……」
彼は呆然とした顔で洞窟から出てきた。
「ティルターシャが言っていた、世界と繋がる感覚は理解できたよ。それでも、分からないことの方が多いが……」
「でもオズは、洞窟の中で光に包まれていたじゃない。絵に描かれてた生き物にも、なれるんじゃないの?」
「それは……」
オスヴァルトは戸惑った様子で後ろにさがった。その姿が溶けて、崩れていく。少女たちが見守る前で、彼の影は長く伸びていった。その生物は蛇の体と頭を持っていて、背中には魚のヒレがある。全身を覆う鱗は硬く、金属のような光沢がある。手足はなく、尻尾の先は矢の先端のような形をしていた。
「私はやはり、人ではなかった。最初から、皆は真実を語っていたんだ。だから、私はもう……」
オスヴァルトの声が、上の方から聞こえてくる。ユールリアとティルターシャは即座に、彼の体にしがみついた。




