騒動
そこは、川のせせらぎが聞こえる森の中。木々に囲まれた場所だった。オスヴァルトはユールリアとティルターシャにフード付きのローブを着せて、声を潜めて呟いた。
「狙われているのがユールリアなら、顔は隠しておくべきだ。ティルターシャと同じ服を着ていれば、周りの目をごまかすこともできるだろう。ティルターシャには苦労をさせてしまうが……」
「苦労だなんて思ってないよ! ティルはユーと一緒に、オズの能力の内容を調べるって決めたんだから。ユーが誰かに拐われたりしたら、一緒に居られなくなっちゃうでしょ? ティルだって、普通の子供じゃないんだから」
ティルターシャが明るく言う。2人の言葉を聞いたユールリアは、恥ずかしそうな笑顔を見せた。
「うん。2人とも、ありがとね」
オスヴァルトとティルターシャが笑みを浮かべて頷く。3人は木々の間を抜けて、森の外に出た。森の外には川が流れていて、そこには大きな橋が架かっている。3人が橋に向かおうとした、その瞬間。近くにあった木の陰から盗賊たちが出てきて、3人の周りを取り囲んだ。盗賊たちの後方で大剣を担いでいる男が、3人に向かって声をかけた。
「すまねえなあ。話は聞かせてもらったぜ。そこの娘さん、どっかの貴族の子供なんだろ? オレらに渡してもらえねえか。大人しくしててくれりゃあ、他の奴らに怪我はさせねえ。オレが保証してやらあ」
オスヴァルトはその言葉を聞いた瞬間に、腰の剣に手を伸ばした。盗賊たちがそれを見て騒ぎだす。
「おいテメエ、何してんだ。怪我してえのか?」
「頭が動くなって言ってんだ。そこでじっとしてやがれ」
オスヴァルトは無言で剣を抜いた。ティルターシャがユールリアに抱きつく。盗賊たちが武器を構えて3人に向かってきた。オスヴァルトが少女たちの前に出て、向かってきた盗賊たちの腕や足に傷をつけた。盗賊たちが武器を取り落として膝をつく。彼らの後方にいた男が、その様子を見て目を細めた。彼は背負っていた大剣を抜いて、地面に向かって振り下ろした。ユールリアは大剣が抜かれたのを確認した直後に、ティルターシャの手を引っ張って、橋へ向かって駆けていった。剣が当たった場所に裂け目ができて、そこから地面が割れていく。盗賊たちが慌てた様子で、森の中に逃げていった。盗賊の首領は逃げていく部下たちには構わずに、大きな両手剣を何度も振るった。オスヴァルトが立っている地面が割れて、大きな音を立てて崩れていく。オスヴァルトは平然とした表情で剣を握って、首領が立っている場所に向かって走っていった。首領が剣を横向きに構えた瞬間に、オスヴァルトはその刃先に乗って、手にした剣を首領の喉元に突きつけた。




