決意
「ねぇオズ、私はどこにも行かないよ」
ユールリアはオスヴァルトを見つめて言いきった。オスヴァルトが目をそらす。
「……何を言っているんだ。お前も見ただろう。私は、人間とは思えないような力を……」
「そうね。オズは高いところから落ちたのに、傷を負わなかった。オズと一緒にいた私たちも無事だったわ。それは確かに特別な力だけど、唯一無二のものじゃない。あのとき、あの男の子も同じ高さから落ちてたのに無傷だったから。男の子はオズとは関係ないし、あれは彼の能力だと思う。だからオズだけじゃないよ。特別な力を持ってるのは」
ユールリアがオスヴァルトに近づく。彼女は彼の右手を取って、彼に向かって笑いかけた。
「それにね、オズ。あの子が私を追いかけてきたのなら、私の性格も知ってるはずよ。死に場所を探して彷徨ってるような男を置いて、自分だけ幸せになれるような人間じゃないってことはね」
「……ユールリア。私、は……」
オスヴァルトが震える声で呟く。
「私はお前たちの保護者だ。お前たちが安全に暮らせる場所を見つけるまで、死ぬつもりはない。それに、お前たちも見ただろう。私は何があっても死なないんだ。毒物の類は効果がない。人より丈夫な体を持って生まれたために、急所を刃物で貫くこともできない。何をどうやっても、死ぬことはできないんだ。だから私は……」
「死ぬ方法を探してた。そうよね?」
ユールリアの追求を受けて、オスヴァルトは口を閉じた。ユールリアは彼の手を引っ張って、その場から離れた。彼は黙ってユールリアについていった。ティルターシャは2人と一緒に歩きながら、オスヴァルトを見上げて言った。
「オズは違うよ。悪魔だとか、魔物だとか。そんなものじゃないと思う」
オスヴァルトがティルターシャに視線を向ける。彼女は自慢げな笑みを見せた。
「ティルはね、最初から知ってたよ。オズが人間じゃないこと。オズの気配は、人間とは違うものだったから。でもね、悪い気配じゃないんだよ。ティルは世界との接続が切れてるけど、それでも分かるの。オズの気配は、晴れた日の青いお空みたいにキラキラしてるよ。だから大丈夫。安心して」
「……そうか」
オスヴァルトはその言葉を聞いて、嬉しそうに笑った。
「ティルターシャがそう思うのなら、それは真実なのだろうな」
2人の会話を聞いたユールリアが、立ち止まって振り返った。
「そのことなんだけど、私、ちょっと思いついたことがあるの。オズは公爵家の人なんでしょ? 王家の血を継いでいる、由緒正しい家の息子。王家が神様の子孫なんだとしたら、オズが受け継いでいるのは神様の力だと思うわ。大陸中を回って神様の姿を確認したら、オズがどんな存在なのか分かると思うけど。どう?」
「ティルも一緒に行くわ。素敵な話だと思うもの」
少女たちが口々に、オスヴァルトに話しかける。オスヴァルトは、戸惑ったような表情を浮かべて頷いた。




