転生者
「そうか。ユールリアが生まれる前の記憶があると言っているのなら、それは本当にあるのだろう」
オスヴァルトは表情を変えずに言いきった。ティルターシャが目を丸くする。
「信じるの? こんな話……」
「信じるさ。ティルターシャは知らないだろうが、私にも色々とあったからな。ローゼンフェルト家には、後ろ暗いことなど何もないというのに……私は、こんな体で生まれてしまった。悪魔か魔物の子を拾ったという噂が流れているくらいだ。ユールリアが生まれる前のことを覚えていたとしても、不思議ではない」
オスヴァルトは真顔で言った。ティルターシャがユールリアに抱きつく。
「オズはユーのこと、信じてくれるって! だから教えてよ。ユーが前世で会った人で、生まれ変わってもずっと追いかけてきてくれそうな人のこと!」
「あ、うん……」
ずっと俯いて考えこんでいたユールリアが、ティルターシャの言葉を聞いて顔をあげる。
「それが、前世の記憶があるっていっても、そんなに確かなものじゃなくて……。ウィアー子爵家の地下室で寝ていたときに、不思議な夢を見たの。私が知らない場所を、私に似た女の子が歩いている夢。その夢を見たから、私はお父さんの跡を追うのを止めて、これから先も生き続けると決めたの」
「じゃあ、その子はユーを助けてくれたのね」
ティルターシャの顔が輝く。ユールリアはそんな彼女の表情を見て、苦笑を浮かべた。
「まあ、そうなるかな。今の私は11才だけど、その子はもっと長く生きてて……そうだ。あのとき見た夢には、幼馴染の子も出てきてたよ。ショートカットで、性別は分からなかったけどね。それと、夢で見た子は結婚してたかな。恋愛結婚だったみたいなの」
「そうなんだ。でも、それなら幼馴染の子っていうのは男の子で、夢の中のユーはその子と結婚したんじゃないの?」
「そうだとしても、名前も顔も思い出せないんじゃ、確かめようがないでしょ? ……私がこんなんじゃ、さっきの男の子もきっとガッカリするだろうし……」
ユールリアが目を伏せる。オスヴァルトは少年が去った方向を見つめながら口を開いた。
「ユールリアが忘れているのなら、何としても思い出させようとするはずだ。あの少年は、お前の記憶がないことも予想していたようだしな」
ユールリアとティルターシャが、同時にオスヴァルトの方を見た。オスヴァルトは少し寂しそうな、苦しそうな表情でその場に立っていた。
「あの少年が本当にお前の知り合いで、生まれる前の記憶がないことも気にしないというのであれば……話は別だ。お前はティルターシャを連れて、あの少年の元に行け。私のような男と行動を共にすれば、お前たちも不幸になってしまうかもしれないからな」




