対峙
「私は、ただの化け物だ。人間とは体の作りが違うと、医師にはそう言われたな」
オスヴァルトが呟く。彼は抱えていた少女たちから手を離して立ち上がった。少年が穏やかな笑みを浮かべる。
「少女を守ろうとしているあなたが、化け物だと言うのですか? この世には、あなた以上の化け物が大勢いるのに」
ユールリアとティルターシャは、同時に目を見開いた。少年の笑顔を見た瞬間に、彼に対して抱いていた敵意が消えてしまったからだ。少女たちは起き上がって、彼に近づこうとした。オスヴァルトが剣を抜いて、2人を守るように立ちはだかる。少年が笑みを深めた。
「剣を納めてください。僕はあなた方の敵ではありませんから」
「そうだな。君が私たちを攻撃する気がないのは分かっている。君は武器を持っていないからな。……それでも、私はここで退くわけにはいかない。私は、彼女たちを守らなければならないんだ」
オスヴァルトが身構える。少年はそれを見て、目を細めた。
「あなたは何故、彼女たちを守ろうとしているのですか? あなたが彼女たちと出会ったのは、数日前のことですよね?」
「会ったこともないのにユールリアと知り合いだと言う君も、似たようなものだと思うがな。私は彼女たちを人買いから救い出した縁で、今も保護者を続けているだけだ。まあ、だからといって……君のような不審者に、ユールリアを預けることはできないが」
男2人が睨みあう。先に目をそらしたのは、少年の方だった。
「……分かりました。今日のところは、帰るとしましょう」
「あ、あの、あなたは……私と、どこで出会ったんですか?」
立ち去ろうとした彼に向かって、オスヴァルトの後ろにいたユールリアが声をかける。少年は首だけを動かして、振り返った。
「僕があなたと出会ったのは、あなたが生まれる前ですよ。ですから、あなたが生まれる前のことを覚えていないのであれば、心当たりがないのも当然です」
少年はそう言って、ヒラリと手を振った。彼の姿が見えなくなった後に、オスヴァルトは自分の背後にいるユールリアの様子を見た。ユールリアは俯いて、何かを考えるような表情を浮かべている。ティルターシャが心配そうな顔で、ユールリアの腕を掴んでいた。
「ユールリア。生まれる前に出会っているとは、どういう意味だ?」
ユールリアは答えない。ティルターシャがユールリアの顔とオスヴァルトの顔を見比べて、戸惑ったような様子で口を開いた。
「あの、あのね、オズ。ティルも変だと思うけど、ユーは本気なの。本気で、生まれる前の記憶があるって信じてるみたいで……」




