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売られる

義母(はは)はユールリアを地下室に閉じ込めたまま、水も食事も与えなかった。


(大丈夫。あの人は私に、利用価値があると言った。このまま放っておかれて、殺されるようなことはないわ)


転生前のことを思い出したユールリアは、以前よりも前向きな性格になっていた。彼女は目を閉じて、地下室から連れ出される時を待ち続けた。


それは、唐突に訪れた。使用人に引きずられて、彼女は地下室を出た。そして、屋敷の前に()まっていた馬車に放り込まれた。彼女は見逃さなかった。義母が御者(ぎょしゃ)の男性から、金貨の詰まった袋を受け取っていたことを。


(人身売買って、重罪だったような気がするけれど……それでも成り立っているということは、需要があるのかしら)


この国でも隣の国でも、人を商品にすることは許可されていない。それでも売人がいるのなら、それは人が高く売れるからだ。ユールリアは馬車の窓から外を見た。馬車は南門を抜けて進んでいく。彼女は故郷の国を離れて、隣国にある人買いの屋敷に連れてこられた。人買いの屋敷は、彼女が今まで暮らしていた屋敷ほどではないが、それなりに広かった。彼女は馬車から下ろされて、屋敷の中に入れられた。そして、小さな部屋に連れていかれた。その部屋の中には、同い年の子供がいた。子供は部屋の隅で小さくなっていたが、ユールリアを見つけて近づいてきた。子供とユールリアの目が合う。子供がゆっくりと口を開いた。


「ねえ、アナタも行き場がないの?」


「そうだよ。君も?」


「うん。……ティルはね、木の精霊の子供なの。精霊って、知ってる?」


「……まあ、知ってるけど」


ユールリアとしての知識の中には、精霊についての情報はない。彼女が知っていることがあるとすれば、転生前のことだけだ。彼女はティルと名乗った少女の手を取って、笑いかけた。


「あまり詳しくはないから、教えてくれると助かるな。君は、精霊と人の間に生まれたの?」


ティルは小さく頷いて、話を続けた。


「そうよ。パパが木の精霊で、ママが人間なの。パパの森が燃えちゃったから、もう帰れないんだ。だから寂しくて、悲しくて、ずっとここで泣いていたの」


「そっか。じゃあ、私と同じだ。私もお父さんとお母さんが死んじゃって、義理のお母さんに売られたから」


「そうなの? ティルと、お友達になってくれる?」


「私で良ければ、喜んで」


ティルがはにかむように笑う。


「ありがと。ティルはね、ティルターシャっていう名前なの。アナタは?」


「私はユールリア。よろしくね、ティル」


「……うん!」


ティルが楽しそうに笑う。ユールリアもつられて笑った。そうして2人は、友達になった。

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