特別な存在
ユールリアは階段を上りきって、砦の1番上にたどり着いた。彼女は崩れそうな壁に近づいて、下を見た。
(ここから降りるのはムリか……。やっぱり、何とかして1階の入り口から出るしかないのかな)
小さな足音が聞こえてくる。彼女はゆっくりと振り返った。息を切らして階段を上ってきたティルターシャが、ユールリアを見つけて駆け寄ってくる。
「ユー……!」
ティルターシャがユールリアに抱きついて、声を上げて泣きだす。ユールリアは彼女の背に腕を回して、彼女が落ち着くまでその背を撫で続けた。
「……ごめんね。私のせいで、怖い思いをさせちゃって」
「違うよ。ユーは悪くないもん。悪いのは、ユーを捕まえようとしてる人たちだよ」
ティルターシャが泣きじゃくりながら言う。ユールリアは唇を引き結んで、彼女を見つめた。抱き合う2人を見つけたオスヴァルトが、2人に近寄って話しかける。
「話なら後でもできる。早く私につかまれ。ここから降りれば、安全に逃げられるだろう?」
「あ、安全にって……! ここから降りたら、死んじゃうよ?!」
ユールリアが目を見開いて叫ぶ。オスヴァルトは真顔で告げた。
「大丈夫。私と降りれば、傷を負うことはないさ」
ティルターシャが指で涙を拭って、オスヴァルトの方に視線を向ける。ユールリアは訝しむような眼差しでオスヴァルトを見た。オスヴァルトは険しい表情になって、2人に向かって手を伸ばした。
「さあ、私の手を取れ。早く!」
「……分かった」
階段を上る、3つ目の足音。それが少年のものだということに気づいたユールリアは、ティルターシャと共にオスヴァルトの手を取った。オスヴァルトは2人の手を掴んで、自分に引き寄せるようにして抱えこんだ。彼はそのまま、近くの壁に寄りかかる。元々壊れかけていた壁は、3人の重さに耐えきれなくなって崩れ落ちた。
「オズ?! 待って、このままじゃあなたが……!」
3人は真っ逆さまに落ちていく。ユールリアとティルターシャはオズにしがみついていて、オズは2人を抱えている。このままの勢いで地面に激突して、無事でいられるわけがない。なのに。
「だから大丈夫だと言っただろう? 私は、何があっても死なないんだ。私と共に落ちたお前たちも、無事だと確信していたよ。そういうことは、何度もあったからな」
オスヴァルトは怪我もせず、土の上に横たわった。少女たちも無傷だった。砦の上にいる少年が、3人が落ちた場所から飛び降りる。オスヴァルトが少女たちを抱えて、転がるように移動した。少年はゆっくりと下降して、両足を地につけた。地に降りた少年は、転がったままの3人に向かって問いかけた。
「流石に驚きましたね。オスヴァルト・ローゼンフェルト。あなたはいったい、何者なんです?」




