森を目指して
同日。ユールリアとティルターシャは、同時に目を覚ました。小さな洞窟の入り口。簡易的な寝床に横たわっていた2人が起き上がる。
「おはよう、ティル」
「おはよう、ユー。今は朝なの?」
「朝というよりお昼だよ」
「オズはどうしてるの?」
「分かんない。近くの泉に、水を組みに行ったんじゃない?」
草を踏む足音が聞こえてくる。2人はそれを聞いて、オスヴァルトが帰ってきたのだと思った。けれど。
「ティル! こっち!」
ユールリアが慌てて立ち上がる。彼女はティルターシャの手を引いて、洞窟の奥に逃げた。洞窟の前に立った男たちが、逃げた少女を追いかける。
「ユー! この先、行き止まりだよ!」
ティルターシャが石の壁に手を当てて叫ぶ。男たちの足音が近づく。ユールリアは息を詰めて、男たちの足音が聞こえる方に目を向けた。
「見つけたぞ! 例の子供だ!」
「捕らえて連れていけ! 金貨3千枚だ!」
男たちの会話が聞こえてくる。ティルターシャは壁から離れて、ユールリアにしがみついた。2人が通ってきた道の方から、誰かが争うような、大きな物音が聞こえてくる。しばらくして、音は聞こえなくなった。ユールリアはティルターシャと共に、ゆっくりと出口に向かって歩いていった。道に、気絶した男たちが転がっている。男たちを気絶させた人間は、2人の姿を見て微笑んだ。その人は、オスヴァルトだった。少女たちは彼の姿を見て安心したのか、気が抜けたような様子で座りこんだ。彼は少女たちに手を貸して、立ち上がらせた。
「2人とも無事だったのか。良かった。すぐにここから出よう。私たちを追っている者がいる」
ユールリアは、彼の言葉を聞いて考えこんだ。
「……それは、ここにオズがいるから? あの人たちは、オズのことを狙ってるの?」
「分からない。そうではないと信じたいが……彼らは、金の話をしていた。金貨3千枚。普通の人間には、とても用意できない額だ」
「でも、公爵家なら用意できる」
「……そうだ。考えたくないことだが、この男たちは……」
「公爵家の依頼で動いていたって? でもこの人たちは間違いなく、私たちを狙っていたわ。公爵家の依頼なら、普通はオズを連れていこうとするんじゃないの?」
「私が居なくなったことを広めたくないのだろうな。私の母国がどの国からも攻められないのは、私の存在が広く知れ渡っているからだ。私は戦場でも試合でも、無敗の男だったからな」
オスヴァルトがそう言ったのと同時に、3人は洞窟の外に出た。少女たちが太陽の光を浴びて、眩しそうに目を細める。3人はそのまま、北西の方向へ向かって足を進めた。




