旅立ち
「本当に、あれで良かったんですか?」
家を出たところで、ユールリアがオスヴァルトに話しかける。
「ああ。私が居なくなったとしても、レオなら上手くやるさ」
オスヴァルトは真顔で答えた。ティルターシャがユールリアの手を強く握って、顔をあげる。
「……船は、もう出てないよね。川を下るのは明日?」
「川……世界江のことか。いや、川下りはしないつもりだ。レオはあの戦いで納得してくれたと思うが、父上と母上は私を探そうとし続けるだろう。川に近寄ると、目撃される確率が高くなる」
オスヴァルトはそう言って、三叉に分かれた道を左に折れて進んでいった。少女たちが手を繋いで、少し後ろから歩いていく。川の側を通っている大きな道とは違って、左の道は少しずつ、狭く細くなっていく。少し先の方に、大きな岩が見えてきた。道を塞ぐように転がっている大岩の前で、3人が立ち止まる。オスヴァルトが岩に向かって剣を振るった。岩が崩れる。その欠片が地面に積もって、小さな山になる。3人は小山を乗り越えて、先へ先へと進んでいった。街灯のない道は、闇に包まれている。先を歩いているはずのオスヴァルトの姿が見えなくなって、ユールリアは立ち止まって辺りを見回した。
「こっち。オズは、こっちにいるよ」
ティルターシャがユールリアに声をかける。ユールリアはティルターシャと繋いでいる手を離さないようにしながら、彼女と一緒に歩いていった。
「ごめん。私、よく見えなくて。ティルは夜目が利くの?」
「ううん。ティルも、暗いのは苦手だよ。でもね、オズの気配はティルたちに近いから……離れてても、場所は分かるの」
「気配が近い? オズも、精霊の子供なの?」
「えっとね、精霊じゃないよ。もっと強くて、大きくて、凄いの。世界との接続が切れてるティルには、それ以上のことは分からないけど……。オズは、特別な人なんだと思う」
遠くの方に、明かりが見えた。少女たちが遅れていることに気づいたオスヴァルトが、ランプの明かりを点けたのだろう。2人は明かりを目指して駆け出した。雲の切れ間から月明かりが差し込む。
「気づくのが遅れてしまったな。これからはもう少し、ゆっくり歩くことにしよう。急ぐ旅ではないのだから」
月明かりに照らされたオスヴァルトは、柔らかい表情を浮かべていた。ユールリアとティルターシャは、彼に向かって手を伸ばした。オスヴァルトが子供たちの手を取る。3人は横並びになって、再び歩きだした。




