家族
少女たちは、公爵夫妻から1番遠い席に座った。公爵夫人がそれを見て、表情を曇らせる。
「この家は気に入らない? 良かったら、近くに離宮を建ててあげるわよ?」
「いえ、大丈夫です。そこまでしていただくわけにはいきませんから」
ユールリアは真顔で言った。落ち込む夫人を抱き寄せて、公爵がユールリアに声をかける。
「君は、貴族の娘なのかね?」
「そうです。ですが、公爵様のお耳に入るような、有名な家ではありません」
「なるほど。君さえ良ければ、出身国と両親の家名を聞かせてもらいたいのだが……」
「私はレイリア王国から来ました。父はウィアー家の5代目で、母はラモーナ家の末娘です」
「……ふむ、確かに聞いたことのない家名ではある。だが、両親がいるということは、それなりの家柄ではあるのか。人買いの屋敷にいたと聞いたが……」
「これはオスヴァルト様にもお話したことですが、後妻として嫁いできたお義母様に嫌われて、人買いに売られたのです。お義母様には実の娘が生まれていましたから、父が亡くなって守ってくれる人がいなくなった私を追い出すのは、簡単なことだったのです」
ユールリアは淡々とした口調で話し続けた。公爵の表情が固まる。オスヴァルトが苦笑を浮かべた。
「父上。彼女たちが人買いの屋敷にいたことは事実です。話したくないことも多いでしょう。気になるからといって、何でも聞きすぎるのは良くないかと」
「う、うむ。そうだな。お前の言うとおりだとも」
公爵が動揺した様子で頷く。夫人がオスヴァルトの方を見た。
「オズ。この子たちは、あなたが引き取ったのね? あなたの子として育てるの?」
「そのつもりです。ローゼンフェルトの血は入っていませんが……」
「そんなこと、気にしなくていいのよ。可愛い子たちね。この子たちが来てくれたなら、もう大丈夫。あなたは旅になんて行かないわ。そうよね……?」
オスヴァルトが口を閉ざす。夫人は焦った。
「嘘。嘘よね? だって、子供を旅に連れていくなんて。そんなことをしたら、その子たちが可哀想だわ」
ユールリアは目を細めた。ティルターシャがユールリアに抱きついて、彼女の耳元で囁いた。
「どうしよう。旅に行かせてもらえないかも。どうしたらいい?」
「大丈夫。後で、黙って抜け出せばいいの。私が何とかするわ。ユーは何も気にしないで」
ユールリアは小声で返した。オスヴァルトは2人を横目で見ながら、公爵に向かって話しかけた。
「お父様。細かいことを話すのは明日にして、今日は彼女たちを休ませてやりたいのです。1階の客室に、彼女たちの部屋を用意していただけませんか?」
「おお、そうだな。では、使用人を呼ぼう。ちょうど西側の部屋が空いているんだ、あの部屋にもう1つベッドを入れれば、この子たちも過ごしやすくなるだろう」
公爵は笑みを浮かべていた。ユールリアはティルターシャに目配せした。ティルターシャは真剣な表情で頷いた。




