命叡が居なくなった後の世界
命叡が突然この世界から消えると大問題なので命叡がいたというみんなの記憶と記録が消されるらしい、但し神通力の使える俺は対象外で、涼香と尊は忘れてしまうらしい
「戸籍や身元捜査とかまともに無かった頃はそんな事をする必要は無かったから楽だったんだけど今は無理だからごめんね」
先輩が軽く謝る
「いえ、もしそうして頂かなければ警察沙汰になりかねますから仕方ありませんよ、これを涼香達に言うべきかどうか……困った」
「それよりお兄さんだけ記憶が残るけど大丈夫?多分凄く辛いよ」
「確かにそうなのですが、命もいますから一人ではないですよ、それに涼香達が辛くならない事は良いことですから」
この事は聞かれたら言うぐらいにしておこう、そう思って保留にした
しかし、失念していた命叡も先輩と話せる事を、次の日仕事を終え夕食前に帰ると家の中が暗かった、物理的にではなく雰囲気が
「ただいまー」
「お帰りなさいませ、龍雄様少々小耳を」
四神獣達が浮かない顔をしている玄武が代表して話し掛けて来る
「ん?どうした?」
「ご主人様が眷属の先輩から記憶が無くなる事をお聞きし、それをご家族様に言ってしまわれまして…」
「げっ、マジか…みんなは?」
「ご主人様の部屋でお話し中で御座います」
「そうか、分かった」
とてもデリケートな話なので、気づかない内に記憶が消え何も知らずに日常を過ごして欲しかったけど気を使いすぎたか?命叡の部屋前まで来ると中から涼香達が泣いている声がする、ノックをしてドア前で呼びかける
「みんな大丈夫か?」
「お父さん…」
かすれた命叡の声がひどい泣き方をしたのだろうと思わせる
「入っても良いか?」
「うん…」
「失礼するぞ…」
命叡が涼香の胸に抱き付いて泣いていたようだその横で尊も泣いている床には使い捨てられたティッシュペーパーが散乱していた
「聞いてしまったか」
「ええ、あなたどうにかならない?」
落ち着いて答える涼香の顔は目が真っ赤で激しく擦ったのだろう目の周りも赤くなっている
「無理だ、規定事項らしい」
「そう、私命叡の事を忘れったぁくっなぁいぃう゛あぁぁぁぁぁあ」
「俺もお姉ちゃんの事忘れたくない!うぐっうっうっ」
涼香は命叡を抱き締め泣きだす、尊も泣いているが腕で顔を隠し声を抑えている
「私も二人に忘れて欲しくない!うわあぁぁあ!」
命叡は涼香の胸で再び泣きだす
「例えば涼香と尊も神通力を使えれば忘れる事は無かったんだけどな」
目の前に白いモヤが出てくる命が来たようだ神通力を纏う
「お兄ちゃん、二人の記憶は無理だけど記憶媒体、写真やビデオ動画を神通力で保護すれば記録は消えないって先輩が」
命が良いことを教えてくれる
「ありがとう命」
「先輩も悪い事したと思ったらしくて裏技を教えてくれたよ」
「あなた?命ちゃんがいるの?」
「ああ、二人の記憶は無理でも写真やビデオ動画なら何とか残せるらしい」
「そっ、それなら今からお姉ちゃんの動画をいっぱい撮ろうよ!」
「それは良いわね、さっそくやりましょ命叡、ね?」
「うん…二人が思い出せるぐらい動画を撮るんだから!」
何とか前向きになってくれた、ビデオカメラは昔から命叡を撮るために買っていたのがまだ動くし、それで撮る事になった
「お父さんそのビデオカメラ貸して二人にメッセージを残しときたいから一人で撮って来る」
「悔いの無いようしっかり撮るんだぞ」
「うん、もちろん!」
命叡はビデオカメラを持って自分の部屋に入って行った
「あれ?お姉ちゃんは?」
「二人のために動画を撮るって」
「そうなんだ、そうだお父さん僕の携帯にあるお姉ちゃんの写真とか動画も残せる?」
「俺が何とかしよう」
「本当!?じゃあお願い」
尊がズイッと携帯を差し出してくる
「あー今からやるのではなく、命叡が召喚される直前でやろうか、神通力を使い続けてしまうし」
「分かった、お姉ちゃんが行くのって、いつ?」
「命叡が18歳になる誕生日の0時だ」
「来週じゃん、お姉ちゃんといっぱい思い出作らないと!お父さんはその時は携帯お願いね」
「まかせておけ、命叡が産まれてきた時からの動画や写真は全て残す」
「記憶が無くなってから写真や動画を見て思い出せるかな?不安だなー」
「確かにな、俺が一生懸命二人に教え込むよ」
こればかりは新たに覚えて貰う形になるだろう
「ごめんねー、お兄さん、命叡ちゃんに凄い剣幕で聞かれて喋っちゃってさー」
突然先輩が出てくる初めは命が来たのかと神通力を纏ったが先輩だった
「いえ、貴重な情報のお陰で色々準備が出来ます」
「もう一つ良い情報がある、これに関しては嫌がる人もいるだろうから当事者本人に確認してね」
「一体なんでしょ?」
「記憶が無くなった所に写真やビデオを見せて洗脳という形で命叡ちゃんがいたと思い込ませる事が出来るよ」
「なるほど、それは二人に聞いてみますね」
「お父さん、どうしたの命様?でも敬語だし…」
「ああ、悪い眷属の先輩だ、尊は記憶を無くした後に洗脳という形で命叡がいたと思い込まされるのはどう思う?」
「それって本当の記憶じゃないって事だよね?んーーーっお姉ちゃんがいたと思えるなら僕はそれでも良いよ」
「そうか、後はお母さんにも聞いてみるか」
涼香もそうして欲しいと言う訳で先輩にお願いする事にした
「任せといて、これでお兄さんは独りぼっちじゃないよ」
これはもしや、先輩は俺のためにわざとこうなるよう命叡に言ったのかもしれない
「色々とありがとう御座います」
「別にお礼なんて良いよこちらの都合で命叡ちゃんを送る訳だし、アフターケアはしておかないとね」
それでも有難いのでいなり寿司を神棚にお供えしておこう
「お父さん、これ撮ったから返す、絶対に私が異世界に行ってから見てよね恥ずかしいから」
命叡がビデオカメラを持ってきた
「分かったちゃんとその時に見るよ」
SDカードを取り出し表に印を付け命叡用SDカード入れに仕舞っておくこのカード入れには命叡が産まれてからずっと撮り続けたSDカードでいっぱいになっている、これが今後増えないのだと思うと悲しくなる
「二人は記憶が消えるが、写真や動画を見せて洗脳という形で命叡が存在したと思い込ませる事になったぞ」
「え?二人ともそれを受け入れたの?」
「どんな形でも命叡を忘れたくないって」
「そうなんだ、違う形だけど覚えていてくれるんだ……、それって過去にあった私との思い出とかはどうなるの?」
「そういえばどうなるんだろうな」
「詳細には覚えて無いよ、というか命叡ちゃんという存在がいて異世界に行ったぐらいしか覚えさせられないよ、せめて動画を見て誤認させるぐらいかな例えば命叡ちゃんと何処かに出かけた場合出かけた事実は消えないけど命叡ちゃんがいた記憶は消えるんだすっぽりと、だから動画や写真があれば何となくいたような感じに誤認させられるんだ」
先輩に聞いてみると微妙な回答だった
「やっぱり無理かーお父さん、これからみんなで私の動画を撮り続けてね」
「出来るだけ二人には撮るように言っておくよ」
そういう訳で家では携帯で命叡を撮り続けた、端から見ると変な状況になっているけど、そしてみんなで思い出話をしながら動画を撮る、命叡との過去を補充するために、涼香と尊それぞれが命叡と思い出話をしながら動画を撮る時間を作った、なるべく洗脳時に抜けが出来ないよう頑張ったそしていよいよ命叡が異世界召喚される前日の夜、明日には命叡が誕生日で18歳になる前日0時に異世界召喚されるので1日早いが誕生日を祝った
「「命叡(お姉ちゃん)誕生日おめでとう」」
「すーーっフゥーーー」
ケーキに灯したロウソクの火を命叡が消し切るパチパチパチパチ家族四神獣みんなで命叡を祝う涼香と尊は手を叩きながら泣いている、俺自身も涙で前がよく見えないしかし大丈夫、バッチリとビデオ撮影しているからな見逃しは無いぞ
「ありがとうみんな、ありがとう…っぅ」
命叡も泣いてしまう
「命叡、はい誕生日プレゼント」
「お姉ちゃん、僕からはこれ」
涼香と尊がそれぞれ命叡にプレゼントを渡す
「ありがとうお母さん尊、今から開けるね」
命叡は尊が渡した大きな筒のプレゼントを開ける中には命叡が最後の年越しということで涼香の実家の祟道神社の境内で揖保川家、栄家両家が集まって撮った写真のA1判ポスターだった振り袖姿の命叡を中心に俺達家族その両脇に揖保川家(四神獣達も入っている)と栄家の全員が集まった写真
「尊ありがとう、あっちで大事に飾っておくよ」
「そうしてくれると嬉しいな」
「じゃあ次はお母さんのやつね」
涼香が渡したスマホより少し大きめの箱を開ける中には金メッキを施されダイヤモンドとルビーがはめられ1輪の花があしらわれた金属製のバレッタだった
「うわー綺麗、ありがとうお母さん」
「これから誕生日を祝えないからね奮発したわよ」
「さっそく付けてみるね」
命叡が肩下まで延びた髪を整えバレッタを付ける
「どう?こんな感じで良い?」
「命叡凄く良い似合ってるわよ」
「お姉ちゃん綺麗だよ似合ってる」
「うんうん、綺麗だぞ命叡」
「ありがとうお父さん、私に惚れた?」
「うん、惚れたぞ、もう命叡にメロメロだ」
命叡は涼香の若い頃に似てきた、何故か少し命の面影が出てきた涼香の美人さに命の可愛らしさを掛け合わせたような感じで、世界一の美少女なんじゃないかな(主観)自慢の娘だ
「もう、お父さん最後だからってリップサービスしすぎだよ」
「命叡、俺からはこれだ、プレゼントというかお守りだな」
これは伏見稲荷大社の本宮祭で献納提灯を奉納すると貰える本宮鈴1対(金メッキ版)我が家では見慣れたお守りだが
「これって伏見稲荷の鈴じゃん……ん?」
やはり命叡は気付いたか
「あれ?これってお父さんの力が入ってる?」
「その通り、物に力を込める方法を命から教わったんだ、もしあっちで寂しいとか悲しい事があってどうしようも無い時に鈴を握って私の力を求めれば悩みなんて吹き飛ぶぞ、それに鈴を鳴らせば邪な者の毒気を抜き正常な判断をさせることだろう、そして魔除けにもなるぞ」
「お父さんありがとう!これを見ればお父さんと一緒にいると思えるよ!」
命叡が大事そうに鈴を手に握る
「さぁ、ケーキを食べましょ命叡は今後食べられるか分からないしいっぱい食べなさい」
涼香はそういってバースデーケーキを切り始める等分ではなく明らかに一つを大きく切る、二分の一の大きさのものを命叡に渡す
「もーこんなに食べられないよー」
ちゃんと夕食は食べているのであれを一人で食べる事は無理だろう
「余ったら尊が食べるわよ」
「ま、いっか、こんなに食べるの夢だったし頂きまーす」
大きく分けられたケーキの半分くらい食べた頃には
「うぅお腹いっぱい……」
「もう尊にあげる?」
「うーん、そうだ!はいお父さんあーん」
「んんっ!?」
命叡がテーブルの対面にいる俺に向けてあーんをしてくる、思わず飲んでいる途中の紅茶を吹きそうになった
「ごほっごほっ、命叡お前な…チラ」
涼香の様子を伺う
クイックイッ涼香は行けとアゴを振っているコクコク尊は笑顔で頷いている
「んんっ、あーん」
命叡が差し出したケーキを食べる
「美味しい?お父さん?」
「ああ旨いぞ命叡ありがとうな」
「んっふーん、私は満足だよ」
命叡の横で涼香が涙ぐんでいる
誕生日を祝い終わる
0時まで後四時間ほど、みんな命叡の部屋で話す事にした荷物をいっぱい持って召喚を待つことにする大きな旅行用キャリーバッグに日用品あちらにはないだろう調味料と命叡が厳選した写真を入れたアルバムと以前撮ったウェディング写真あちらで価値があるか分からないが百万円相当の純金、白米3kg、あちらで農作するための籾、大豆、色々な種、念のための風邪薬、伏見稲荷で売っているミニチュア鳥居、俺が渡した鈴、そしてお菓子これでもかと色々敷き詰め尊がさっき渡したポスターを手に持つ大きいから入らなかった
「大きさ考えた方が良かった、失敗した」
尊が後悔している
「私はこの大きさが良いよ尊」
「セロハンテープを持っていくか?」
「そう言えばそうだね持っていこう」
気付いた事があれば背負い鞄に入れる、神通力で保護しておくべき写真や動画を傍に置いている、話している間も動画を取り続けているのでビデオカメラも神通力で保護する、みんなと明るくなるよう話しをしていく、すると命叡のいる床が光り出し六芒星の魔方陣が現れる
これから主人公が変わりますので新たに話を立ち上げましたタイトルは『お父さんと結婚したい私が異世界召還される件』となります続きの気になるかたはそちらを見てください。一応もう一つの話しに合わせてこちらも更新する場合もありますのでよろしくお願いします




