一方命と別れた後の滝雄2
母上と姉上との挨拶を済ませ寝殿にある自分の場所(屏風で区切られている)にある置き畳の上で足を伸ばし太股の上に亀になった玄武を撫でながら力を与えていると
「滝雄戻ってきたらしいな」
屏風の外から湊人兄上の声がする
「はい、つい先程戻りました」
「少し話がある入るぞ」
「はい、どうぞ」
湊人兄上が屏風をずらし入ってくる置き畳の前にある円座にあぐらを組んで座る
「東大寺での仕事はどうしたのだ?」
「地震の被害が気になると言って休みを頂きました」
「実は今回の地震で画師に欠員が出たらしくてな、こちらに戻って来れるか?」
「はい、大丈夫です元々最近仕事が減っておりますし、あちらも時々呼び出すぐらいが丁度良いぐらいなのではないでしょうか」
「そうか、それは良かった」
「一応あちらに文を出しておきますね」
「うむ、頼む」
「滝雄いるか?」
屏風の外で舟人兄上の声がする
「はい、おりますよ」
「入るぞ」
そう言って舟人兄上が入ってくる
「湊人兄上もおりましたか」
「舟人、今日はご苦労だったのではないか?」
「そうなのですよ湊人兄上、写経事業は下火だったのに大量の薪を焼べられた勢いですよ」
愚痴を良いながら円座に座る
「今回の地震の被害が上位階の屋敷に影響が出たのが関係しているのだろう」
「滝雄、そういう訳で明日写経所に入ってくれ見返し絵待ちの分がいっぱい貯まっている」
舟人兄上も湊人兄上と同じ様な事を言って来る、災害があると繁盛する仕事とは皮肉なものだ
「分かりました」
「滝雄、事後承諾になるが、住まいをしばらく借りるぞ」
「それは大丈夫ですよ、今回の地震で舟人兄上のお体が無事で良かったです」
「有難う恩に着る、使用人も世話になる、こき使ってくれ」
「平城京での被害は無かったのか?」
「そうですね、少し揺れた程度でしたし問題無かったですよ」
「それにしても、長岡京遷都は間違いだったのでは?一番被害の受けた下位の同僚達も愚痴ってたぞ、それに早良親王の祟りだとな」
「舟人兄上早良親王の怨念を利用している者がいるのです」
「え?それ、他の人に聞かれるとまずい話じゃないか?声を抑えろ」
舟人兄上が声を潜めだす
「すみません舟人兄上、天皇陛下に恨みを持つ妖狐の仕業なのです」
自分も念のため声を潜める
「妖狐が何で天皇陛下を?」
「好いた娘が大伴家持の孫だったらしく、流刑にしたことなど娘に関する色々な事で怨みを持ち早良親王の怨念を取りこみ今回の災いを起こしているのです、私はそれを阻止したいのです」
「それは早良親王も悔やまれんな、早良親王に仕えてきた一家として何としても頼むぞ滝雄」
「はい、励みます」
その後兄上達と夕餉を食べながら次の都の事などを話した、日も落ちもう寝ようかとしたところで
「兄上、よろしいですか?」
外から命の声がする
「命か?大丈夫だぞ」
「それでは失礼します」
命が入ってくる、しかし、隣にいる兄上達に聞こえてしまうな
「兄上、叡兄上は都の遷都、天皇が移動する時に動くと思われますのでそれまでは普段通りにお暮らし下さい」
「そうか分かった」
「滝雄、誰と話をしている?」
「湊人兄上、えっと、それは…」
返答に困っていると命の姿が消えた
「申し訳御座いません湊人様私で御座います」
白虎が返答してくれる
「ん?白虎か?あの声はそうだったかな?そうだ、都の遷都は急いでも一、二年は要るぞ」
「分かりました有難う御座います」
湊人兄上が自分の寝床に戻る音がする
「白虎、有難う」
声を潜めて礼を言う
「これぐらい容易いです」
「そう言えば今日の分みんなに与えないとな」
「それはありがたく頂きます」
「やったー」
「有難う御座います」
朱雀と青龍も出てくるみんなに力を与え眠りに着くこれから一、二年かそれまでに叡が何もしなければ良いけど…
「そう言えば玄武、風に怨念がまじってたよな?」
「はい、そうで御座います、ですから念のため結界を張り直しました」
「これから天気には気を付けておかないとな」
「この感じからしてあと四、五日ほどからが危ないかと」
「分かった」
今は夜なのでもう寝よう、と言うわけで寝る 旅で疲れてるし早く寝たい




