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蜂の居場所②

「どう、美味しい?」

「う゛ん。めちゃくちゃ美味しい……」


 泣きに泣くこと数分間、冷静さをとりもどした俺は同級生の胸に抱かれて子どものように泣いたという現実と向き合うこととなった。当然悶絶ものなのだが、笛吹の手前当然発狂は回避した。心の中は羞恥心と自責で大騒ぎだったがそれを表に出さないように何とか食卓に着いている。少し塩辛いオムライスを食べてまた泣きそうになったが必死に我慢した。結果返事の声は濁ったが笛吹は気に留めることもなく自分の料理が褒められたことを素直に喜んでいる。——昨日料理経験はほぼないと聞いていたから、それを考えると実際よく出来ていた。

 

「学校で何かあったの?」


 スプーンを口に運びながらその質問にどう答えたものか、考える。

 蝶野さんの言う通り二人のことを黙っていれば、きっと笛吹は何も知らずに近々学校に復帰して今まで通り平穏に過ごすことが出来るだろう。だが、本当にそれでいいのだろうか。苦しそうにしていた二人を見ていると、俺にはそれが最善とは思えなかった。だが、全ては彼らの、そしてなによりも笛吹の意思次第だ。ならば俺に今できることは一つだ。


「笛吹はさ、もし過去に自分を傷つけた奴が本気で反省して謝ってきたら許せるか?」

「……急だね」

「ごめん、でもそれを聞かないとその質問に答えられないんだ」


 笛吹と蝶野さんと天道くん、三人ともの様子を見た限り、彼らは歩み寄る余地があるように思えてならないのだ。結局笛吹次第なのだが、俺の見てきた笛吹彪香は——。


「許せるかどうかは、何されたのかによるけど……そうだなぁ、相手が本気で後悔してて、歩み寄ってくれるなら私もちゃんと向き合いたい……かな。今は背中を支えてくれる人たちが居るんだもん。何かあっても結城くんに慰めてもらえるでしょ?」

「それは……うん、保証する」

 

 過去を受け入れて未来を向ける。そんな奴だ。そして彼女を大切に思っている人が、逃げ込める家があるのだ。

 

「……わかった。じゃあ、今日あったこと話すよ」

 

次は夕方五時

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