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花に集う訳②

 そういうことか。ようやく合点がいった。去年は時々話題に上がっていた笛吹への嫌がらせの話が一時期からピタリと止んだのはこの二人の働きだったのか。二人は過去の罪悪感から笛吹を陰から守る自警団のようなことをしているのだ。名乗り出ることもせず、なんの見返りも求めず、せめて笛吹がこれ以上傷つくことがないようにと——。

 本当に、心が複雑だ。どちらの気持ちも中途半端に理解してしまって雁字搦めになっている。

 

「蜂谷のことも最初は笛吹に良からぬことをしてるんじゃないかって、疑った。ごめん」

「実を言うと、昨日の麻美との言い合いを見た時点であなたへの最初の疑いはほぼ解消してた。それでも呼び出したのはあんたと彪ちゃんの仲を確認するため……結果は思ってたよりずっと複雑で驚いたけど、とにかくあなたにお願いがあるの」

「……お願い?」


 蝶野はぎゅっと制服の胸のあたりを握って、今にも泣きそうな顔で言う。


「彪ちゃんに何かあったら教えて欲しいの。そして何か協力できそうなことがあれば手伝わせてほしい。でも、私たちのことは絶対に彪ちゃんに言わないで。陰で彪ちゃんへの嫌がらせを妨害してることも……出来れば名前も出さないで欲しい。そして、これが一番の願い——あの子を幸せにしてあげて欲しい……色々言っちゃったし、実際悔しいけどあなたにはそれが出来ると思う。勝手だけど、私の分まで託したい」


 俺はハイともイイエとも言えず、胸を張って任せろと宣うことも出来なかった。ただ懇願と期待の視線を送ってくる二人に対して曖昧に頷くことで返事の代わりにした。

 

「そうだ、蜂谷。何かあったときに手紙だと面倒だから連絡先交換しましょ。携帯出して」


 帰り際、思い出したように蝶野が言った。日頃ほとんど開くことのない携帯電話を久しぶりに取り出し、言われるがまま連絡先を交換した。流れで天道くんとも。母さんとサキ姉しか登録されていなかった『フレンド』の欄に同級生の名前が並んでいるのはなんだか自分の携帯ではなくなったような違和感があった。

 連絡先の交換が終わると二人は部活があるからと言って足早に去っていった。俺もいつまでも呆けては居られない。夕飯の支度もしないといけない。そうだ笛吹は鋭いところがあるから動揺をちゃんと隠さなないと。


「ここんとこ毎日悩み抱えて帰ってるな……はあ」


次は明日の朝七時

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