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花に集う訳①

 混乱した場を取りまとめるように、「でもよ」と天道くんが蝶野さんに向かって諭すような口調で語りかけた。

 

「笛吹は蜂谷とかなり仲良くなってるっぽいし、それはめちゃくちゃ良いことだろ。今までそんなこと無かったじゃんか。俺は蜂谷を信頼してもいいと思うぜ」


 天道くんはどの立場からなのかよくわからない発言をする。妙に上から目線というか、先輩面というか。とにかくその態度には少しムッとするが、『信頼してもいい』というのがどうにも引っ掛かった。俺に何かを求めているような言葉選びだ。

 対する蝶野さんは不満顔だ。苦虫をつぶしたような表情とはこういう顔のことを言うのだろうな、と思わず考えてしまうような渋い顔をしていた。

 

「そういえば二人は笛吹とどういうご関係で?笛吹を知ってるみたいだけど……」


 場が膠着状態になったのを見計らって、ずっと気になったことを聞いた。ある意味当然沸き上がるであろうその疑問に対して蝶野さんは肩を震わせて、怯えたような態度を示した。これまでの高圧的なものとは真逆の弱気な姿に混乱する。天道くんの方も蝶野さんほどではないが難しい表情で中空を見つめて固まってしまった。

 二人にとって何かしらの地雷を踏みぬいたのは明白だった。しかし、笛吹のことをよく知ると思われる二人、しかも今までのやりとりから察するに抱いているのは恐らく好意的な感情のはずだ。もしかしたら笛吹が友人を増やすチャンスかもしれない。

 そんな淡い期待を粉々に粉砕するような言葉が、二人の口から聞こえてきた。


「俺はガキの頃笛吹と小学校が一緒で——あいつをいじめた。花人だからってだけの理由で」

「私は……友達になろうとしてくれた彪ちゃんを、その……裏切って、酷く傷つけた。去年のことよ」


 頭をハンマーでたたき壊されたようなショックに襲われる。つまりこの二人は——笛吹の敵じゃないか。

 二人はごちゃごちゃに混乱している俺をよそに、半ば独白のような形で懺悔を続けた。


「とても許されるようなことじゃないのは分かってる……今更謝ったって自己満足にしかならないのも。でも、私は、私は彪ちゃんと……いや、ごめん。何でもない。とにかく私が彪ちゃんを気にかけてるのは罪滅ぼしなの」

「俺は、事情とすれ違いがあった蝶野とは違って完璧に加害者だ。だから今更仲良くなろうとか、そんなことは思ってないけどよ。せめて蝶野の罪滅ぼしに協力して陰から笛吹のこと悪意から守りたい。そんだけだ」

次は一時間後

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