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初めから変わらないもの

 ——笛吹とは喋れたから成長したかと思ったけど、共感覚も人見知りも何一つ変わってなかった……。


 誰もいない教室で机に突っ伏して先程の男子生徒とのやり取りを思い返すと本当に自己嫌悪しか湧いてこなかった。ほとんど期待はしていなかったとはいえ、僅かな期待が泡と消えたのは少なからずショックだ。

 体を起こして前を見るが当然そこに笛吹の姿がある訳もなく、いつも以上に殺風景で何の生気も感じない灰色の世界だけがあった。

 こうしていると新学年初日のことを思い出す。あの日もこんな風に誰も居ない教室でぼーっとしていた。

 クラス替え初日はいつも以上に人が密集することが分かっていたから早めに行くことにしたのだ。ランダムに決められた席は窓際の後ろから二番目、中々悪くない場所だ。特にすることも無く、頬杖をついて窓からまばらに生徒が増えてきた正門を眺めていると、突然ふわりと甘い花の香りが鼻腔を刺激した。そして香りの主は目の前の席に座った。色の抜け落ちた背景にただ()()()()()姿()()()が色付いて見えた。

 ——やっぱり笛吹は特別な存在なのか。

 我ながらクサイことを考えていると思うが、家族以外で初めから共感覚が出ることも人見知りすることもなかったのは笛吹だけだった。それに一緒に居たいと思うのも。


『姉弟ってこうやっておやすみの挨拶するって——』


 ふと昨日のことを思い出して顔が熱くなる。奥歯が軽く浮くような感覚と胸に走る焦燥感を必死に抑え込み、また机に突っ伏した。こんなことでこれからやっていけるのだろうか……初め持っていたのとは違う種類の不安に襲われるが、同時に早く帰りたいという素直な欲求があった。

また短いのでもう一話投稿してます。

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