9話 スカウト
神殿で回復魔法の講義を受けます。
どうやら、大丈夫そうです。
ごまかせます。
回復魔法は四肢欠損などは治療できないそうですが、簡単な傷や怪我、病気といったものを治療できるそうで、聖魔法の治癒の劣化版といったところのようです。
回復魔法を使うときは「ヒール」もしくは「ハイヒール」と言えばいいそうです。
回復魔法の持ち主ならそれで魔力を使い魔法が使えるようです。
聖魔法の講義はないので、聖魔法の場合はどうやるのかは、教えてもらえませんでしたが、仕方ありません。
どうやらこの講義は実践もあるようです。
何かが部屋に持ち込まれました。
傷のあるネズミが籠に入れられていますね。
それを治せと。
自信のある方々から治していきます。
とはいってもほとんどが治せないんですね。
残りは私も含め2名ですか。
やりますか。
「ヒール……」
祈りを捧げ、なんとなく傷のあるところを念入りに治るようにイメージします。
「「「「おおっ!」」」」
できましたね。
皆さん、回復魔法だと思っているようですね。
バレていません。
ネズミが元気に走り回っています。
神官らしい人が近づいてきます。
スカウトでした。
断ります。
大聖女だとバレてもいけませんし、なにより召喚した国の神殿は最悪でしたからね。
そういえば、亜里沙や、美鈴ちゃん、菜々子は元気でしょうか?
結界は亜里沙が張ることが出来たのでしょうか?
一応、聖女と名乗っていましたからね。
責任は重大です。
まぁ、私には関係ないのですが。
回復魔法の講義を終えて、さて、宿屋を探さなくては……と思っていると、誰かが肩を叩いてきます。
うっとうしいなぁ、と思いながら叩いている人間をみると、イケオジの美丈夫がいます。
ちょっとだけ好みのタイプかもしれません。
付き合ってくれと言われたら迷いますよ?
「すまないが、君のヒールを見ていた。回復魔法士を探していたんだが、良かったら冒険者ギルドに来てくれないだろうか?」
スカウトでした。
神殿でないし、行ってみようかな。
今日の宿屋を探さなくてはならないことを話します。
冒険者ギルドの隣の宿屋を紹介されました。
銀貨3枚で朝夕の食事付き、どうやら冒険者ギルドとの特別な契約を交わしているようです。
一緒に冒険者ギルドに向かいます。
ほぅ、あれが冒険者ギルド。
隣の宿屋に入ります。
「ギルド長、どうかしたのですか」
「いや、今晩こちらに、このお嬢さんを冒険者ギルドの関係者として泊めてやって欲しいのだが」
「差額の請求書はいつもの通り冒険者ギルドに回しますね」
「よろしく頼む」
なるほどこのイケオジは冒険者ギルドのギルド長でしたか。
地位もあり、名誉もあり、好物件ですね。
手は出しませんよ。
結婚しているでしょうしね。
NOタッチです。
話がついたようです。
隣の冒険者ギルドに行きます。
冒険者ギルドは大きいですね。
中も広々。
はー、受付も他のカウンターも美人揃いですね。
奥になにか部屋がありますね。
応接室でしょうか?
そこに向かって歩きます。
ガラス窓ですが、スモークガラスですね、中がぼんやりとしか見えません。
「ここは回復魔法士が控え、怪我をした冒険者の治療をしていた治療室なのだが、最近の回復魔法士は腕が悪くてまともに治療が出来ない。最近までここにいたのもそんな回復魔法士なのだが、街の治療院からスカウトを受け辞めていったのはいいが次が決まらなくてね。神殿の講義を受けたばかりの新人でもいいからと回復魔法士を探していたんだ」
なるほど、そこに私が引っ掛かったと……。
小さめのテーブルと二脚の椅子、治療をするためのベッド。
棚にはシーツや空き瓶。
「シーツはわかりますが、空き瓶はなんですか?」
「空き瓶はポーションを入れていた瓶だ、前の回復魔法士は腕が悪かったから薬師ギルドでポーションを買って治療していたんだ」
「シーツが汚れたらどうすればいいのですか?」
「それはこっちだ」
洗濯室のような場所に案内されます。
なるほど、この籠に入れるんですね。
冒険者ギルドの治療室には冒険者でない近所の人も来ることがあるようです。
ただ、最近は腕の悪い回復魔法士ばかりだったので離れていったとのこと。
私ぐらい腕がいいとそうした人たちも戻ってくるかもしれないと言われました。
お金については、簡単な切り傷が銀貨1枚、深い切り傷が銀貨5枚だと教えてもらいました。そして、料金表があるのでそれを参考にしてくれと言われました。
だけど、冒険者のだいたいが怪我などを経験しており、私が料金表を見て請求するより、自分から早く金を支払うだろうと言われました。
お金をごまかさないんですか? と聞くと。
ごまかして腕のいい回復魔法士が他に行かれたら結局自分たちの首を絞めることになるから嘘は言わないだろうと言われました。
冒険者ギルドは場所を貸すことと、トラブルがあったときに介入するだけで、基本的にこの治療室の経営は私になるようです。
治療室の使用料も支払わなくていいそうで、なんだか、いい条件のような気がします。