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72話 お婆さんの弟子

 結果として、二人の女の子が回復魔法を使えることがわかりました。


 10才と6才ですね。


 10才の子供が、サラちゃん、茶色の瞳に、茶髪が肩まで届く長さ、そして、痩せた身体。6才の子供はアンナちゃん、青い瞳に、金髪が背中まで届く長さ、そして、やはり少し痩せぎみだ。


「どうだい、私が身体をはったかいがあったろう」


 言葉通り、お婆さんがこれはと感じた子供に自分の腕をナイフで軽く切ってみせ、ヒールのこつを教えながら回復魔法を使わせた結果、サラちゃんとアンナちゃんが使えることが判明したのだが、潜在的には10才のサラちゃんのほうが魔力の量が多いらしく鍛えれば回復魔法士として一人立ちできるそうで、6才のアンナちゃんは器用そうだが、魔力は強いが量としては、そこまで多そうではないということで薬師として、ポーションなどを作るほうが向いているのではないか? というお婆さんの説明がなされ、アンナちゃんはお弟子さんとして、お婆さんと一緒に暮らしてはどうかという提案が教会のお姉さんからあり、お婆さん側に引き取られることになった。


 もう一人のサラちゃんについての相談は今されている。


「サラちゃんはどうしたいのかしら?」


 教会のお姉さんからサラちゃんへ話しがいく。


「神殿は嫌!」


「だったら……」


 と、お姉さんが言ってチラリと私を見る。


「いや、私も冒険者ギルドにお世話になっているだけで聞いてみないと」


 私は、その話しを一旦保留にし、話題を変えた。


 絵本や積み木といった遊具の問題だ。


 お姉さんの話しでは使わなくなった絵本の寄付や、孤児たちが街の人にもらった物を遊具としているだけで、絵本やおもちゃなどは買ったことが無いそうだ。


 だったらそれらを寄付するという話しをすると、お姉さんは、はじめは遠慮していたが、お婆さんからも熱心に子供たちの為になるという説得をされ最後には喜んで承知してくれた。


 お姉さんからは、絵本もいいが、この孤児院では、簡単な読み書き計算は教えているものの専門的なものは教えていないとのことで、商会やそうしたところに(つと)めたときに役に立つこの世界の簿記のようなものがあるらしく、できたらそれらの教科書が欲しいと言われた。


 私はそれに対し、購入を検討してみると答え、サラちゃんのことはギルド長に相談してみると約束した。


 お婆さんの方は今日からアンナちゃんを引き取るとし、お姉さんに渡された書類を書くため教会の応接室に行くとのことであったので、ついて行くことにした。


 教会の応接室でお婆さんが書類にサインをし、お婆さんとアンナちゃんと私とで、アンナちゃんの寝ている共同の雑魚寝部屋に行き、アンナちゃんの個人的な少ない荷物をお婆さんが持つとお婆さんはアンナちゃんの手を引き孤児院を出て行くこととなった。


 アンナちゃんは教会のお姉さんや孤児である皆に手を振り、別れを惜しんだが、お婆さんもいつでも自分と一緒なら来ても良いと言い、特に別れを特別なものとはみなしてはいないようだった。


 私は、お婆さんの持っていたアンナちゃんの荷物を代わりに持つ為に受け取り、お婆さんの家に向かった。


「あんたの人の良さは分かっていたけど、私も住み込みの弟子を取るはめになるとは思っていなかったよ」


 うーん、私も冒険者ギルドで弟子を取るはめになりそうだと思いながら、アンナちゃんを交えて会話をしながら、お婆さんの家に到着した。


「世話をかけたね、荷物もありがとよ」


 お婆さんがさっさと私から荷物をとり、家の中に入っていく。


「寄っていくかい? お茶ぐらい淹れるよ。それより遅くなったが、昼食の時間だからなにか腹にたまるもののほうがいいかい?」と、お婆さんが言うので遠慮なくごちそうになることにした。


「何か食べたいです」

「はいよ」

「サンドイッチでいいかい?」 

「それでお願いします」


 リビングでくつろぎながら、アンナちゃんとお話しします。


「アンナちゃんはお弟子さんになって良かったのかな?」

「はい、薬師は貴重な職業です。私は身体も小さく、冒険者などは無理ですし、下働きにしかなれませんからちょうど良かったです」


 喜んでいるようですね。


 そうこうしているうちに、食事の用意が出来たそうで台所からリビングへ持っていくように頼まれました。


「三人分は多いからね」

「はい」


 自分たちの食事です、自分の分は自分でテーブルに持っていきます。


 ハムとチーズのライ麦パンのサンドイッチですね。


「このハムとチーズはどこから仕入れているのですか?」

「近くの村から定期便で配達してもらってるんだよ、その村はハムやソーセージ、チーズといった加工品を作っていて、卵なんかも安く手に入るんだよ。豚や牛、鶏を家畜として飼っているからね、産業として作らせている領主への配達のついでだけどね」


 やり手の領主だとは知っていましたが、さすがですね。領主の館で食べたものはそうした調達ルートがあったのですね。


「私も欲しいのですが」

「ちょっと無理だと思うね。大きな商会とかだったらともかく、個人では私ぐらいだからね」


 リビングのテーブルに座り自然に食事をしながら話します。

 

 ソーセージやハムはオーク肉で作ったほうが旨いとか、近くの村に行き、年に一回、下級ポーションを持っていき、家畜の健康見ることで特別に分けてもらっているとか、豚は清潔な場所でなくては病気になりやすいなど思った以上に詳しい内容を聞くことが出来ました。


「あんただったら、聖水を作るときに私のついでに頼んだ分を持っていってもいいけどね」


 代理注文ですか。


 アンナちゃんにお婆さんが、このお姉さんが聖水を作れることは内緒にしておきなと命令しています。


「お婆さんがそれでいいならお願いしたいです」

「わかった、任せな」


 お婆さんにハムとチーズの注文をして、食事が終わりました。

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