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71話 子供たち

 そろそろお暇しようかと思っていると、奥からぞろぞろと子供たちがやって来ました。


「誰かいるー」

「誰?」

「……見たことがない」

「知らない人だー」

「女の人だ」


 ガヤガヤとなにか私について話されたりしてますね。


 注目されてます、このまま出ていってもいいのですが、挨拶ぐらいしたほうがいいのかもしれません。


「冒険者ギルドで回復魔法士をしております。由菜と申します」


 こちらでは、姓などないかもしれませんし、宮川などは言わないほうがいいかもしれませんよね。


「回復魔法士」

「すっげぇ、回復魔法が使えるんだ」

「カッコいい!」


 子供たちの反応がいいですね。


「回復魔法士は神殿に行けばきちんとした講習が受けられますよ?」

「行きたくないし、そんな力なんかなかったよ」

「特別な奴じゃなきゃ、そんな力なんてないさ」


 ここにいる子供たちは、回復魔法は使えなかったということですかね?


「回復魔法が使えれば、手厚い神殿での保護が受けられますが、残念ながらここにいる子供たちは回復魔法が使えないのです」


 教会のお姉さんが言うには、神殿と教会とは違い、神殿には聖女をはじめとした特殊な力を持つ者たちを保護し、権力者からの保護も厚く潤沢な資金を得て運営されているようで、教会は地域に根差した祈りの場としての意味合いが深く、主に領主や寄付でまかなわれているようです。


「神殿って感じ悪いのー、この孤児院で風邪が流行ったときもポーションを買うお金がなくて困って泣きついたら、借金としてあとでお金をとるのよ」


 一人の女の子が言います。


「そんなことあるんですか?」

「まぁ、ポーションよりだいぶ安くされてはいましたが、なにしろ風邪になった子供たちも多くてあの時は困りました」


 お姉さんがそう発言します。しかし、そんなことがあったんですね。


 私がこの世界に来るきっかけとなった神殿では好き勝手な召喚をされましたが、他の国の神殿でもあまり良くはなく、住民からの評判が悪いのですね。


 でもこの子供たち全員が回復魔法が使えないというのもどうなのでしょうか、皆、自分のステータスを知っているのでしょうか?


 一応聞いてみますか。


「皆さんは自分たちのステータスを知っているんですよね?」

「ステータス?」

「なにそれ?」

「知らなーい」


 おや、神殿で教えてもらったのですが、この世界にいる子供たちが知らないとは。


 お姉さんがツンツンと私をつつきます。


「多分、神殿で秘密にしていて一般人には教えていないことです。庶民に教えるとあとで暴動が起こった時に困りますから」


 教えてはいけないことでしたか。


 なら、私が教えることは危険ですから、黙っていましょう。


 権力者にとって国民は馬鹿で力の無いほうが扱い易くていいんです、下手に力をつけてもらっては困るんですよね、きっと神殿にとっても、一般人は知識も正確な情報も知らさず、いつまでも搾取できる対象であって欲しいのかもしれません。


 だから、自分自身のステータスを知らずに神殿で講習を受け、回復魔法が発動しない人たちがいたんですね。はじめから自分たちのステータスを知らなければ試しに講習を受ける方もいるでしょう。


 だとすると、この子たちは神殿で講習を受けたのでしょうか。


 聞いてみましょう。


「皆さんは神殿で回復魔法が使えるか調べてもらったのですか?」

「魔力自体があるかどうかを調べてもらったよ」

「神殿でヒールって言えと言われてやったよ」


 うーん、ただヒールと言っても魔法が発動するとは限りませんよね。


 たしか、薬師のお婆さんは鑑定が使えましたね。


 ポーションを鑑定していましたから、人間も鑑定出来るでしょう。


 お婆さん……呼んできましょうか。


 お姉さんに断って、お婆さんの家に急ぎお婆さんを呼んできました。


「なんだかわからないけど、呼ばれたから一緒についてきたが、鑑定では人物の鑑定は出来ないよ、対象が複雑でないものならともかく、人間のような複雑な生き物など鑑定出来ないのが常識だよ。もっとも、とてつもない鑑定の力を持った者なら別かもしれんがね」


 どうやら、あちらの世界にあった異世界転移の小説のような鑑定チートは出来ないようですね。


「だが、回復魔法を使えるかどうかならなんとなくでいいならわかるかもしれないから一応見ていくかい」

「わかるのですか?」

「私も回復魔法が使えるからね、同類はなんとなくわかるのさ」


 なるほど、頼もしいです。

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