7話 結界について
この国からさらに東に行ったところに小さい国があるらしい、そこは農業国で随分のんびりした国でありながら、反面、魔法がたいへん発達した国で、今回行われた異世界召喚も出来るだろうと言われている。
私は召喚の反対、帰還が行いたい。
私の目的が叶うかどうかはわからないが、行ってみることにした。
そこを目的地として、乗り合い馬車を探してみる。
見つけたのは、乗り合い馬車というより荷馬車だ。
話を聞いてみると、その農業国から来るときは野菜を載せて、帰るときは人や家畜を乗せて行くのだそうだ。
今回家畜がないので人を乗せる為に待っていたそうだ、出発の時間まではまだまだあり、その間に旅の準備をしてきたらどうだと、提案された。
街外れの雑貨屋で保存食と水を入れる皮袋を購入した。
そして、サービスで皮袋に水を入れてもらう。
荷馬車に戻ると説明を受けた。
この荷馬車で3日程度のところに隣国はあるらしい。
野菜が届くぐらいだからそれほど遠くはないと思っていたが、意外に近い。
なお、国に入るときには銀貨2枚が必要となる。
だいたいどこでも同じようだ。
御者が馬車の下にくくりつけて隠しておいた座布団のようなものを出し、荷馬車に座布団を敷いた。
どうやらこの上に座るらしい、お金は銀貨5枚、前金だ。
金を支払い、荷馬車に乗り込む。
夜営は勿論あるが、毛布が一枚ずつしかないらしい。
まぁ、あるだけましだと思うしかない。
荷馬車が動き始めた。
思ったよりも揺れる。
忘れずに荷馬車の周囲に結界を張る。
どうやら、元いた隣国と違い魔物は出ないらしい、理由を聞くと驚いた。
元いた隣国はどうやら魔族たちの住む土地を狙って攻撃をしていたらしい。
魔族は穏健でめったに攻撃はしないが、あの国のやり口の汚なさにどうやら魔物を使って攻撃をしていたという話だ。
先代の聖女が寿命で亡くなり、しばらく大人しくしていたが、異世界から聖女を召喚したと同時にまた攻撃を仕掛けたらしい。
らしい、と言うのは遠く離れた国のことなので御者のおじさんにも、正確な情報がないからだが。
うーん、思っていた以上に腐った国だ。
これは、国を出てきて正解だったのかも、あの国に結界はもうないのだし。
ま、私が結界を解いたのだが。
結界の力についても聞いてみた。
結界は人によって様々で力の強い聖女なら、魔物を一匹も通さないし、弱い聖女なら弱い魔物でも、強い魔物でも時々通してしまうそうだ。
私の場合はどちらだろう。
肩書きには大とつく、大聖女だが実際はよくわからない。
国と国との間は緩衝地帯が多く、どちらの所有でもない地域が広がる。
そうした場所でなら結界は張られずに、魔物は出て来るらしい。
新しい聖女が来てから魔物が出たという噂は聞いていないと御者は笑って言った。
私はそうだったのですか、と相づちを打った。