63話 お泊まり
そのまま、瘴気についてお婆さんと話をすると、話の流れでお婆さんに夕食をごちそうしてもらうことになりました。
「すみません、なんだか夕食を食べにきたようになってしまって」
「いいんだよ、独り暮らしだからね、たまにはいいさ」
今日はスープ餃子で、わざわざ二人分作ってくれたそうです。
これも以前召喚された人たちの知識から作られたレシピで、塩味の鶏ガラスープに餃子が入ったものでした。
皮は手作りだそうで、モチモチしています。
「しかし、聖女なのに、私の作るような普通の食事でいいのかね? 今からでも聖女と名乗れば贅沢三昧の暮らしが出来るよ?」
お婆さんが餃子を食べながら言い、私をチラリと見て悩んだ顔をします。
私は口の中に入っていた餃子を食べると、慌てて言います。
「いいんです。今のままのほうが自由ですし、何より他の人から口を挟まれて色々言われることもないですし」
亜里沙も神官と思われるおじいさんに付きまとわれていましたからね。
私はそんなのは、嫌です。
「そんなもんかね、私だって色々言われたら嫌だけど……しかし、あんたの場合弱そうだからね、なにか嫌なことを押し付けられるんじゃないかと心配でね」
「大丈夫ですよ、腕のいい回復魔法士として、大切にされていますから」
「あー、冒険者ギルドのギルド長が睨みを効かせているんだね、まぁ、多少は安心か」
「まぁ、ギルド長からは大切にされてますね」
冒険者ギルドで寝泊まりさせてもらえたのはギルド長の推薦があったからですしね。
多分、知らないだけで、何かしらの恩恵は受けているでしょう、冒険者ギルド内で絡まれたこともありませんし。
夕食を食べ終わり帰ろうとすると、もう夜だし、ここは郊外だから女の独り歩きは危ないと泊まっていくように言われました。
空いている客室があるとのこと、お風呂に入らせてもらい、その日は大人しくお婆さんの家に泊まりました。
次の日、パンと、ベーコンと野菜の入ったコンソメスープ、オムレツと、なんだかわからない初めて見たフルーツの朝食をいただきました。ちなみに、フルーツはスモモぐらいの大きさでオレンジ色をしていて、皮ごと食べられる甘い物でした。
食後に、泊めてもらったお礼にお金を渡そうとしたところ拒まれたので、今度なにか買って来ようと思ったら私になにかするなら孤児院にしてくれと言われました。
……孤児院あるんですね。
街の外れにあるそうです。
行くなら、治安が悪いところを抜けるので、気をつけてくれと言われました。
それから、お婆さんからまた聖水作りに来るようにと言われ、それを約束して冒険者ギルドに向けて帰りました。
冒険者ギルドに帰ると、行列が少なくなっていました。
毎日、治療室を開けていましたからね。
患者さんが少なくなるのも当然です。
昼食が思ったよりも早くなりました。




