62話 瘴気について
夕方になり、チラホラと怪我人の患者が来ましたが、患者がいなくなると、私は素早く治療室を閉め、お婆さんの家に急ぎました。
お婆さんの家の扉をノックし、返事があったので、家の中に入ります。
「待ってたよ」
「お待たせしました」
「じゃあ、こっちだね」
お婆さんに連れられて、ポーション作りの部屋にやってきます。
「まずは、ここに水が入っているから、これらを全部聖水にしておくれ、前回はポーションの作り方を教えたりしたから金は払わなかったけど、今回は違うから金を支払うよ、水瓶一つにつき、金貨5枚でどうだい? 鍋はそれぞれ金貨1枚で」
とても大きな水瓶が五つあります。周りには水の入った鍋がたくさんあります。
せっかく弟子にしてもらったのに、お金をもらうのは気が引けます。
祈るだけですし、無料でもいいですよね。
それに、私はこの世界で生まれたわけでもないので、この世界に疎いので、いろいろ教えてもらったほうが得かもしれません。
「聖水は作りますが、私はこの世界に来て日も浅いです。いろいろ教えてもらったり、助けてもらえたほうが、お金をもらうよりもいいのですが」
「私なんかに助けられることがあるのかわからないがそのほうがいいならそうするよ、ただ金を支払わないからといって聖水を作る水の分量は減らさないけどね」
「はい、それでお願いします」
交渉が成立しました。
聖水を作る。
祈りを捧げ、怪我や病気が治るように願いも込めます。
用意された水全てを聖水にし、お婆さんに話しかけます。
「これで多くの人たちが助かるんですよね」
「まぁ、冒険者のほうは、瘴気がなくならないと魔物が発生し続けるから、根本的な解決にはならないけどね」
「瘴気?」
「悪いものの代表さ、悪意の塊みたいなものでそれから魔物が生まれ、植物は枯れたり萎れたりするのさ、動物は瘴気に触れると寿命を縮めて死に至る。人間もそうさ、近づいたら弱る、魔族でも同じだが、強い者なら全然平気だと聞いたことがあるが、どうだろうね。そういえば、瘴気は聖女だけが祓うことが出来るらしい、瘴気は見たことがあるのかい?」
「いいえ、瘴気は見たことがありません、この近くにあるのですか?」
「まぁ、噂では森の奥に行けばあるそうだが、人は近づけないから……私も半分は人だから確認したことはないね」
森の奥か、確か森にはオークがいましたね。
今度の週末に狩りに行ってみようかな。
レベルをあげて強くなるのもいいですし、瘴気というものを一度見たほうがいいのかもしれません。
気は進みませんが聖女だけが祓えるというのが引っ掛かりますね、覚悟を決めますか。




