61話 ポーション買い取り
グレンさんから、一つおかしな発言はありましたが、その後はおかしな発言もなく軽い会話がおこなわれ、私もジェフリーさんも警戒心を解きました。
グレンさんは長く冒険者をやっていたというだけあって様々なところに行っているらしく、珍しい土地の話や名だたる観光地の話をおもしろおかしく話してくれたのです。
もちろん、私の好きなエビについても聞いてみましたよ。
少し離れているようですが海のあるところでは、エビが食べられているようです。
いつか食べに行きたいですね。
ジェフリーさんもグレンさんに打ち解け、いろんな話をしていました。
始めはどうなることかと思いましたが、そんなにおかしなことにはならず、ホッとしました。
ただ、グレンさんの私を見る目が少し熱を帯びた気がしたのですが、気のせいでしょう。
私は意志が強そうな目をしているとは言われますが、いたって普通の人間です、容姿も優れてはいませんし、頭だって良くはない、普通です。
グレンさんにそのような目で見られるような人間ではないのです。
食事も終わり、冒険者ギルドに帰りました。
グレンさんは待ち構えていた女性たちに囲まれ身動きがとれないようです。
私はそれを見ながら余裕をもって、治療室に入ります。
今日は、怪我人が少なく、ポーションを買う人ばかりですね。
どうやらここでポーションを販売し始めたので、手軽にポーションが手に入るようになり、怪我をしたらその場でポーションを飲んだり、かけたりして治してしまうようです。
薬師ギルドでも手に入るのですが、手に入る本数には制限があって今まで湯水のようには使えなかったのですが、私がここで多く販売するようになってから、節約はしつつもポーションで治してしまうのが当たり前になったらしいです。
良いことです。痛みを我慢してここまで来るよりも、ずっといいです。
ここでの、ポーションは切らせません。
患者もポーションを買うお客さんもいなくなったころに薬師のお婆さんが来ました。
「やれやれ、やっかいなことになったよ」
「どうしたんですか?」
「薬師ギルドが押し掛けてきてね、ポーションを冒険者ギルドに売るのをやめて、自分たちに売れとはっきり言ってきたんだよ」
「……」
「まぁ、あんたへの謝罪も、私の弟子だと云うのに、私への謝罪もなかったから追い返したけどね、どうやらあんたへの買い取りをしようとした職員だけでなく、薬師ギルドそのものが腐っちまったみたいでね、王都にある薬師ギルドに手紙で連絡をしておいたが、どうなることやら」
どうやら、大変なことになりそうですね。
今週末でなく近い内にお婆さんのところで聖水を作って欲しいと言われたので、今日の仕事が終わったら行くと言い、お婆さんから大量のポーションの買い取りをしました。
お婆さんの見送りをしようと、治療室を一緒に出るとお婆さんはカウンターで大量の薬草を買い込んでいます。
どうやら、領主による寝たきりの病人やそれに近い怪我人への救済が効を奏して人々の間で噂になっているらしく、特級ポーションの供給が追い付かないようです。
ちなみに、お婆さんが供給の追い付かない特級ポーションをここで大量に卸しているのは、危険な仕事をしている冒険者が安心出来るように優先的に購入出来るようにしたいとのことで、どうやら、販売をしている弟子である私の面子を一部考えての意味合いもあったようです。
その話を聞いて、頭が下がる思いがしました。
それからお婆さんの話では、領主に対しての希望として、特級ポーションでないと治せない人たちだけでなく、上級ポーションで治せる人たちも対象にして欲しいという話も上がっていることを聞きました。
この地の領主はやり手だから心配いらないよ、とお婆さんは笑っていましたが、これからどうなるのでしょうか。
私は少し心配になりました。




