54話 ポーションを求める行列
朝から冒険者ギルドに行列が出来ている。
冒険者も並んでいるようだ。
確かに冒険者は一般人と朝から一緒に並んではいけないときつく禁止にはしなかったが、なんでだろう。
その理由は患者さんを診ているうちにわかった。
冒険者のほとんどがポーションを欲しがり、治療を求めていないからだった。
ポーションが良く売れる。
一般人に一番売れるポーションは下級ポーションだが、冒険者には他のポーションもまんべんなく売れる。
それだけ、危険な職業だからだろう。
ポーションを売りながら、患者さんも診る。
ポーションなら午後からも売っているはずだが、どうして午前中にと問えば、売り切れるなら早めに並んで買いたいとのことだった。
ポーション販売はすぐに終わるので、並んでいる時間が長く申し訳ない気がしたが、治療室の人員は私しかおらず、仕方ないので買うだけの方々には悪いが治療をする人たちと一緒に並んで待ってもらうことになった。
精力的に仕事をこなしながら、途中、自分の疲れを癒し、頑張ってお昼までに患者さん全員の治療を終わらせた。
お昼になり、隣の宿屋の食堂に飛び込む。
いつものお兄さんがいた。
お兄さんは笑って、お疲れさんと言ってくれた。
どうやら、冒険者ギルドの行列を見たらしくからかわれてしまった。
私は、あの行列は、ほとんどポーションを求める人たちのもので、治療しない人がほとんどだったと話した。
「しかし、すごいな、朝ここを通りがかったらすごい行列が出来ているんだからな、薬師ギルドがよく黙っているな」
お兄さんが顔を上に向けて唸っている。
薬師ギルドかぁ、ポーションを騙し取られそうになったことを話す。
お兄さんが顔をしかめる。
話している間に、今日の日替わりがきたのでお兄さんに半分渡す。
「薬師ギルドも墜ちたもんだな、薬師ギルドは病人には優しく薬師たちにも親切だったはずなんだが、そんな職員を雇っているなんてなにかあったのか?」
ここに来たばかりの私にはわからない、お婆さんが私の分も怒ってくれたと、お兄さんに話す。
お兄さんは再び笑って、お婆さんらしいと、お婆さんが正義をしたエピソードをいくつか話してくれた。
お婆さんは元々曲がったことが大嫌いで、こうしたことに首を突っ込むタイプらしい。
私も、お婆さんの怒った様子を思い出し、お兄さんと一緒に笑った。
私は、この世界に来てはじめてしっかりと笑ったのではないだろうか。
心の底から笑えるなんて久しぶりと思いながら、楽しい時間を過ごした。




