38話 ギルド長の活躍
なにはともあれ、良かったです。
お嬢様も元気になったし、庭師の方も喜んでいるし。
庭師の方は幼い頃に死んでしまった母親の代わりに小さい頃からお嬢様をずっと見てきたそうで、ずいぶんと仲がいいなと思っていましたが、そういうわけだったんですね。
ギルド長と私は執事に案内されて、応接室に来ました。
ここで、仕事の疲れをとってくつろいで欲しいとのことです。
くつろぎますよ、存分に。
だって、テーブルの上にはアフタヌーンティーセットがありますから、三段のスタンドに入ったサンドイッチにスコーン、ケーキ、どれもおいしそうです。
私たちよりも前に召喚された地球の方、絶対いるでしょう。
自重してないですしね。
執事が紅茶を入れてくれました。
ありがたくいただきます。
うん?
ほんのわずかですが、違和感を感じましたよ。
普通は、患者さんにしか、やらないのですが、診ますかね。
自分をチェックをして。
あー。
お嬢様の身体の中にあったものよりも強力な悪いものが入っています。
まさか、毒?
私自身を治して、執事の目を見ます。
目はそらしません、ですが、目が泳いでいますね。
お嬢様は毒を盛られていたのでしょうか。
この執事に。
「では、私はこれで失礼します」
「待ってください! その前にこれを飲んでください」
「これは、お客さまに淹れた紅茶でして、私が飲むわけにはまいりません」
「でも、これって、毒が入ってますよね」
「いえ、そのようなことは……」
「だったら、飲んでください」
「……」
そのとき、ギルド長が動きました。
一瞬で、執事との距離を詰めると、執事の腹を殴ったのです。
「ぐっ!」
執事が腹を押さえて蹲りました。
扉を開け、ギルド長がなにかを叫んでいます。
あっという間でした。
ギルド長が執事の腕を後ろ手に掴み、蹲った身体に体重をかけて押さえ込んでいます。
バタバタと人が走ってくる音がすると、手にロープを持った人たちが中に入ってきて、執事をぐるぐる巻きにしました。
普段から、不法侵入者対策にしっかりと連携して捕まえる訓練をしていたとか。
私の持っていた紅茶は鑑定にかけられるらしく、恭しく持っていかれました。
そして、アフタヌーンティーセットも、もしもの為に持っていかれてしまいました。
アアッ!
私の楽しみが。
あーあ……ぐすっ。
心の涙が流れます。




