30話 眼光鋭い男
朝になりました。
何事もなく、無事でした。
隣に行き、朝食を食べます。
いつもと同じ食事でホッとします。
昨日は怖かったですね。
原因がわからないだけに気持ち悪いです。
朝食を食べ終わり、冒険者ギルドに行こうとすると、ご主人に呼び止められました。
あ、冒険者ギルドのギルド長もいますね。
「申し訳ない、こちらでの警戒が甘かったのかもしれん、しばらく冒険者ギルドに住んでもらったほうがいいと思うので、なにか私物があれば持ってきてもらってもいいだろうか」
ギルド長からの謝罪と提案ですね。
「わかりました」
謝罪を受け入れ、ギルド長と一緒に宿屋の部屋に戻ります。
そして、私物をマジックバックに入れ部屋をあとにします。
「こちら、お泊まりになられない分の差額になります」
「ありがとうございます」
宿屋のご主人から、前に渡した宿泊費の差額が返金されます。
「冒険者ギルドでの宿泊費は必要ないんですか?」
ギルド長に疑問に思ったことを聞きます。
「基本的には職員や、特別強い魔物が出たときの冒険者しか使わない部屋だから金は必要ない。まぁ、備え付けの簡易な台所や風呂なんかがあるので、その分の魔石代と、掃除をしたり、服なんかを洗ってくれる通いの家政婦なんかがいるから金をもらってもいいんだが、冒険者ギルドが儲かっている分を還元しているので問題はない」
「そうなんですね」
台所にお風呂があるんですね。
宿屋の厨房を借りようと思ってましたが、ちょうど良かったです。
お風呂があるのも嬉しいですね。
お風呂に入るのも久しぶりです。
ギルド長と一緒に冒険者ギルドに帰ります。
冒険者ギルドに着きました。
借りている部屋に行き、マジックバックに入れた私物を出します。
治療室にいきます。
行列です。
患者さんを診ていきます。
「ハイヒール」
治すイメージで。
「ハイヒール」
「ハイヒール」
「ハイヒール」
今日は症状の重い患者さんが、多いですね。
それに小さな子どもの比率が高いです。
「ハイヒール」
治すイメージで。
全身を確認して、大丈夫そうですね。
「終わりましたよ、お疲れ様です」
「ありがとうございます。皆の言っていたとおりだ」
「皆?」
「はい、村の皆です。交代で身体の不調がある者たちが来てるんです。村には薬師も回復魔法士もいないものですから子どもたちも皆連れて来てみたんです」
「体調の悪い子どもも多かったですが、なぜでしょうか」
「流行り病ですよ、ちょっとたちの悪い風邪が流行ってこじらせたんです」
「なるほど」
「下級ポーションだとギリギリ治すことの出来るぐらいのもので、こちらに来れば安く診ていただける上に完全に治るとの噂がありまして皆で来たんですよ」
下級でも、ポーションは1本銀貨5枚、しかも手に入れづらいそうで村では得られなかったそうです。
私のところに来れば1回、銀貨1枚や2枚なので、安いところに宿泊してもお釣りがくるし、街に来て珍しいものを見たり、遊んで帰ることが出来るので村での評判が良かったそうです。
「村には回復魔法士はいないので、いつでも先生がどこかに移りたくなったら言ってくださいね、私たちの村はナノハ村です」
「そうですか、ありがとうございます。いまのところは予定がないので、申し訳ないのですが」
「いえいえ、記憶の片隅にでも覚えていただければ」
なるほどお昼のお兄さんが言っていたとおりですね。
近隣の町や村ですか。
お昼頃に患者さんがいなくなりました。
今日も忙しかったですね。
宿屋の食堂に行きます。
いつもの私の席に……。
あれ? お兄さんがいませんね。
忙しかったのかな。
いつも座る席に着きます。
「すみません、お姉さんは回復魔法士ですか?」
「……」
眼光の鋭い嫌な雰囲気のあるお客さんですね。
違うところに座りましょう。
席を立ちます。
そして、違う席に着きます。
「すみません、回復魔法士ですか?」
しつこいですね。
席を立ち、店をでます。
お兄さんがいなかったのはこれが原因でしょうか?
冒険者ギルドに帰ります。
あれ?お兄さんだ。
「ああ、良かった回復魔法士さんが無事で、なんか変な奴が睨みをきかせていたし、他で食事をしてここに警告にきたんだけど入れ違いになったらしいな。簡単なオーク肉のサンドイッチを買ったんだ、もしあの食堂で食べられなかったら食べてくれ」
「ありがとうございます」
入れ違いか、それにしてもあのお客さんは普通の感じじゃないな。
お兄さんにサンドイッチの代金を支払おうとしたけど、いつもの礼だといって受け取ってもらえず、タダでいただくことになった。
それにしても、狙いが私とは、弱ったな。
お兄さんに先ほどの変なお客さんとの話をすると、驚いていた。
なんでも、いつもお兄さんの座る席に陣取って周りを牽制していたそうで、なぜだか、わからないけど、お兄さんは関わりを避けたほうがいいと思って、いつもの食堂で食べることを止めたそうだけど、狙いが私とはわからなかったらしい。
なので、お兄さんは少し離れた食堂で食べて、お土産として私の為にサンドイッチを包んでもらったらしい。
冒険者ギルドを通じて宿屋に忠告してもらうのもいいが、なんだかしつこそうなので、しばらく、宿屋の食堂に行かないことに私は決めた。
お兄さんは残念がったが、仕方ないと諦め、こうしたことがなくなったら、また、いつもの食堂に食べに来てくれよと笑って去って行った。
さて、なんだか怖いことになってきましたが、とりあえず、治療室でサンドイッチでも食べましょうかね。
お腹が空きました。




