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3話 最低の扱い

 あー、それにしても亜里沙がうるさい。


 先ほどの男性に相手にされなかったのか別の男性にしなだれかかっている。


 ここはやつのハーレムか?


 とにかく早く逃げないと。


 周りのクラスメイトは?と見回してみると、ああ、皆、亜里沙にげんなりしてるみたい。


「よくやるわよねー」


 時々話す美鈴ちゃんだ、正統派美少女。


 サラッサラの絹糸のような黒髪に博多人形のような顔立ち。


「ここをホストクラブかなにかと勘違いしてるんじゃない?」


 ショートカットでボーイッシュな陸上選手の菜々子もそう言ってくる。


 それと私。


 三人寄れば文殊の知恵ではなく、毒舌シスターズと呼ばれている。


 女三人寄ればかしましい?うーん、そうとも言う。


 ああ、美鈴ちゃんが腕組みをしている。不機嫌さを隠そうともしない。菜々子は菜々子で舌打ちを繰り返している。


 二人の機嫌が悪すぎる。


 さて、どうしよう。


 どうしようもないな。


 話題を変えるか。


「二人共、ステータスは見た?」


 私は二人に聞いてみた。


「見たよ!」

「見た見た」


「がっかりだよねー、私なんて村人と芸術家」

「私は商人かな。由菜は、なんだった?」


 美鈴ちゃんは村人と芸術家、菜々子は商人。


「……私は村人かな?」


 誤魔化してみる、大聖女なんて言えないからね。


「というか、美鈴ちゃんは2つも称号があったの?」


 美鈴ちゃんに聞いてみる。


「あったよー、なんでかわからないけど、でも、亜里沙の様子を見てると亜里沙が聖女みたいだねー、ほら、自信満々で男性と腕まで組んで胸を押し付けてるし」

「ホント、目障り。私としては元の世界に帰して欲しい」

「帰りたいよねー」


 美鈴ちゃんと菜々子が話し合っている。ああ、私も帰りたい。


 現実的な問題として学校の授業に遅れがでる。


 早々に帰らなくては。


「皆さんよろしいかな。こちらにご自身の名前と称号を書き込んでください。それらによって扱いを分けさせていただきます」


 なるほど、それぞれの価値によって扱いを変えるということか。


 村人と書く私は最低だろうな。


 案の定、狭くて薄暗い物置みたいなところに詰め込まれ、粗末な服と下着が一着分用意されていた。


 食事は黒パン一つと、くず野菜の薄い塩味のスープ。


 まぁ、いい。


 魔王とやらと対峙しないだけありがたい。


 風呂は一週間に二回入れるが残り湯しか使えないらしい。


 ふぅ、嫌になるが仕方がない。


 次の日から、下女としての仕事が待っていた。


 掃除、洗濯、台所で野菜の皮剥き。


 とりあえず仕事は片っ端からやらされた。


 水仕事も多く、手も荒れそうだが聖魔法の治癒で乗り切った。


 どうやら、私の今いるところは神殿で、召喚も王宮から要請されて神官が行ったらしかった。


 あのおじいさんは神官だったのかな。


 神殿で亜里沙を見た。


 きらびやかな衣装に身を包み、おじいさんに結界をこの国に張るように懇願されていた。


 亜里沙は無視をしたり、誤魔化したりしていたけど、なんとなくおじいさんもかわいそうだったし、亜里沙に意地悪がしたくなって、国全体に結界をこっそりと張ってみた。


 私自身が光るといったこともなく、結界は普通に張ることが出来た。


 それから亜里沙の様子を見てると何も変わらなかったが、おじいさんは結界に気がついて亜里沙に感謝しはじめた。


 亜里沙は最初は驚いていたけど、最終的には自信満々に偉そうにふんぞり返っていた。


 微妙。


 亜里沙は聖女ではないのだろうか。


 もし、聖女ならおじいさんに言われた時点で結界を張っているだろう。


 昔からあの子は嘘つきだったからな。


 私のお気に入りの物も何回も取られた。


 その上で亜里沙は、私がくれると言って渡されたと、父親に平気で嘘をついていた。


 きれいな物や可愛い物は亜里沙に全部取られた。


 それだから、私はきれいで可愛い物を欲しがらなくなった。


 昔の話だ。


 夜中に美鈴ちゃんと菜々子が部屋に訪ねて来た。


 端の部屋なのによくわかったな。


 どうやら、美鈴ちゃんが菜々子の部屋に来て、それから二人で私の部屋に来たらしい。


 話があるというので、美鈴ちゃんの話を聞くと、どうやら、1ヶ月後に全員の意見を聞き、ここに残るかどうかを決めるらしい。


 私は仕事が忙しく、そうしたことは聞かされなかったが、そうなるらしい。


 出ていくなら、この三人で一緒に出ていかない?と美鈴ちゃんに言われ、頷くことにした。


 この神殿では監視も多くあまり私たちには良くない状況らしい。


 1ヶ月、目立たぬようにすることを約束して、この世界に慣れることを第一の目的として二人と別れた。

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