22話 裏切りの代償〈side美鈴〉
私は1ヶ月後に菜々子と一緒に始めに召喚された部屋の片隅にいた。
菜々子が裏切らないか見張っている必要があったのと、確実に由菜が出ていくことになることを見る為だ。
由菜が来た。
由菜は出ていくことにした。
当然だ、私たちは黙っている。
由菜から、私たちに出ていくのかと確認があった。
私たちは出ていくと告げた。
そして明日の朝、神殿の門に集合することを約束した。
菜々子は青い顔をしている。
由菜と別れ、私たちは、菜々子の部屋にきた。
菜々子は荒れていて、落ち着かせるのに時間がかかった。
せめてもの優しさと、明日門にいない私たちを捜させない為に嘘の手紙を書いた。
私たちは朝、神殿騎士たちと恋人になったという嘘の手紙を、通りすがりのメイドに金を渡して由菜に届けてもらった。
由菜は驚いただろう。
だけど、仕方がない、誰だって自分が可愛い。
自分に嘘はつけない。
私は私自身の保身を図った。
由菜の出ていく頃合いだ。
私と菜々子は遠くから見つからないように見送ることにした。
由菜の通る廊下にはクラスメイトのほとんどが来ていた。
神殿側の思惑だ。
みじめに去る由菜を見せて、逃げ出さないように、限界まで働かせる為に躾るんだ。
クラスメイト以外にも、この神殿で働く人たちが動員され、せせら笑いや、冷笑を浮かべていた。
見せしめだと思ったがなにも出来ない。
私には力が無い。
私たちは黙って由菜を見送った。
そうして、部屋に戻って二人で泣いた。
それから、1週間が経とうとしているとき、突然、亜里沙を支持している神官のおじいさんが、叫び声を上げた。
「結界が無い!!」
おじいさんは血圧が上がったのか、倒れそうになって神殿騎士に支えられていた。
おじいさんは亜里沙の元に行くと、土下座をして頼み込んでいた。
結界を元に戻してくれと。
亜里沙は馬鹿にしたようにおじいさんを罵倒すると、その場を去った。
ざわつくなか、夜を迎え、深夜になってこの国に押し寄せる魔物が大勢現れ、遠くの村や町が滅んだという情報が入ってきた。
私は、亜里沙の部屋に行き、男性たちと交歓している亜里沙の頬を叩き「結界を張りなさい」と言った。
亜里沙はしばし呆然とした表情で「そんなこと出来ない」とポツリと言った。
私や神殿騎士はその言葉を聞き、驚き固まった。
亜里沙は聖女じゃないの?
誰かが、私の近くにやって来た。
誰?
騎士団長?
どうして、ここに?
「この国は魔族に敗北した、講和条約として、まずは今回召喚した異世界人たちを隣国、スカルド帝国の奴隷にする。先日出ていった者は含まれない、今神殿にいる者だけだ。騎士たちよ、服を着て、この二人を連行しろ!」
ちょっと待って、なにを言っているの?
私はここで平和に……。
「あーあ、始めから負けるかもしれないから、隣の国と話しはしてあったんだけど、早かったな、逃げ出さないように異世界人を囲い込んでみたり色々したんだけどな」
「まぁ、しょうがないさ。おら! 服を着ろ! 聖女じゃないなら、お前の価値なんてただの娼婦だ!」
亜里沙が蹴られています。
私は騎士団長をもう一度見ます。
「負けたのですか?」
「この国はな」
「団長はなぜここに?」
フフッと団長が笑うと、私は神殿騎士に腕を取られ部屋を出ていかされました。
亜里沙のいた部屋からは、圧し殺した笑い声が、ずっと聞こえてきました。
私はどうなるのでしょうか。
これは由菜を裏切った罰かもしれません。
私は絶望しました。




