表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/73

21話 裏切り〈side美鈴〉

 私は、根岸美鈴という。


 私はクラスメイトと共に召喚され、異世界転移した。


 私の称号は、村人と芸術家。


 スキルなどはない。


 だけど私は最低の称号ではなかったせいか、服も住むところも食べ物もクラスメイトの中で最低とはならなかった。


 私は芸術家の講師に導かれ、この世界で芸術家としてやっていくこととなった。


 クラスメイトの中で最低の扱いを受けているのは友人の宮川由菜だ。


 休みなく働かされているらしい。


 着ている服もみすぼらしく、私たちのいる神殿でも最低な者しか着ない服だ。


 今回の召喚目的である聖女は、亜里沙というわがままなクラスメイトだ。


 なんであんなわがままな娘が聖女として選ばれたのか不思議だ。


 亜里沙は見目の良い神殿騎士と遊んでばかりいる。


 噂では、そうした男性たちと一夜を共にしているらしい。


 もちろん、亜里沙とそうした関係にならない男性もいる。


 初めてこの世界に来たとき亜里沙に付きまとわれていた男性は神殿騎士でなく、この国の騎士団長らしい、この男性は亜里沙のことを始めから相手にしていなかった。


 噂によると、圧倒的な強さで2年前に、騎士団長の役職に就いたとのことで、艶のある黒髪と切れ長の赤い目が特徴だ。

 

 男性に興味のない私ですら、その騎士団長のことを想うだけで胸が高鳴るほど魅力的な男性だった。




 私は、私自身の安全の為に、友人たちに内緒でこの国の情報を得ようとしている。


 主にターゲットは神殿騎士だ。


 私の容姿を気に入り、私に好かれようとする者も多少ではあるが、いないこともない。


 情報はそうした者たちから得ている。


 私は今もう一人の友人、橋本菜々子の部屋に向かっている。


 菜々子の部屋に行く為には亜里沙の部屋を横切らなければならない。


 亜里沙の部屋のそばに来ると嬌声が聞こえた。


 亜里沙の部屋を守る為、扉の前に立つ二人の神殿騎士は、ニヤニヤ笑いをしながら話し合っている。


 少し着崩した胸元、乱れた髪、亜里沙と寝たのかもしれない。


 私はそそくさとその場を離れ、菜々子の元に足早に向かった。


 菜々子の部屋に到着し、さっそくその話をすると、『あの、あばずれの尻軽が!』と怒っていた。


 菜々子と今後のことを話す。


 菜々子が言うには、私たちは監視を受けているらしい。


 どうやら、そのような気配がするとのことであった。


 実は、1ヶ月後にこの神殿を出るか否かを決めなくてはならない話になっていて神殿側の個人を大切にしているというパフォーマンスかもしれないが私は迷っている、村人と芸術家が私の称号だ。とてもではないが、一人では生きてゆくことは不可能。


 まず、菜々子に相談して、次に由菜に話すことにした。


 話す順番は単に部屋の遠さだ。


 由菜の部屋は遠く、私を気に入っている男性に場所を聞かなければわからない程だった。


 由菜の部屋に行き、私と菜々子と三人で神殿を出ていく話しをする。


 由菜は喜んでいたようにも見えた。


 由菜の部屋は非常に狭い、出ていくことが出来るなら喜んで出ていくだろうなと思った。


 1ヶ月が経とうとしているとき、私と仲の良い神殿騎士から裏話を聞いた。


 どうやら、神殿から出ていく者は潰すという話だった。


 今も情報操作で、嘘の情報を流し、神殿に忠誠を誓わない異世界人を排除しているという話だった。


 ここから出ていくときに渡される金貨は5枚。


 しかし、これでは、どう見積もっても、1ヶ月ぐらいしか生活費としてもたないそうだ。


 これを、1年間もつお金として嘘を教えていることがまず一つ。


 そして、西の国と東の国の情報を逆に話しているらしい。


 西には、人間でも、亜人でも関係なく、見目の良い者は性的奴隷とし、そうでない者たちは肉体奴隷として扱うようであり、東には、そうした奴隷制度が禁止されている国々があるらしいが、それを逆に話している。


 出ていった者が間違えて西の国に行き、悲惨な目に遭うように神殿側が嘘を流す。


 始めから私たちには逃げ場がなかった。


 絶望しかない。


 だけど、私はまだましだ。


 芸術家としてこの国の為に働くことが出来る。


 菜々子にさっそく相談すると顔色を悪くした。


 由菜に……と言う菜々子を制して私はその神殿騎士から言われた最後の言葉を告げた。


「もし、誰も出ていかなければ、見せしめとして誰か一人は必ず神殿から、出される」と。


 菜々子は、見せしめ!? と驚いているが、神殿側の思惑としては、ああはなりたくないと限界まで努力する、人間家畜を作りだす為とのことであった。


 神殿はどこまでも腐っているが、逃げ道などない。


 由菜には悪いが、菜々子と二人黙っていることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ