15話 暴れる男
食事を食べ終わった。
治療室に戻ってもいいが、服を買っていない。
治療室を開けるのは、私の自由でいいとのことだったので、買い物に出かけることにした。
服屋、服屋、服屋。
探してみると服屋が何軒かある。
ひとつは、オーダーメイドの店なのだろうか、服の後ろに布の束が見えた。
他は中古品と、新品の店みたいだった。
お金もあるし、新品の店にしようかな。
店に入る。
私に似合う服と下着を頼む。
服は2着、下着は3組でいいだろう。
服を試着する。
よし、これでいい。
全部で、金貨10枚になった。
異常な値段設定。
高額すぎるだろう、と思ったが、この世界ならこんなものかとも思った。
多分、大量生産でなく、個々に作られているのだろう、仕方がないと感じた。
治療室に戻る。
待ってた人が数名いた。
治療室を開け、買った服の荷物を棚に詰め込む。
「お待たせしました」
一人ずつ中に入ってもらう。
一人目は、がたいのいい男性だ。
年齢は少しいっていて、髪に白髪が混じっている。
どこが悪いんだろうか。
ベッドに横になってもらう。
どこも悪くないようだ。
頭の先から、足の先まで念入りに調べる。
腸が弱いのかな?
少し胃も荒れている。
「少し胃腸が弱っているようですね。他にはなにもないですが、胃腸に回復魔法をかけますか?」
「そんなことはない、お前は嘘つきだ。俺は足が悪いはずだ!」
突然、怒鳴りつけて暴れ始めた。
自分の周囲に結界を張る。
男性が、私の腕を掴もうとしたからだ。
治療室の扉が開き、昨日治療した男性が入ってきた。
おもむろに暴れている男性の腕を後ろ手に掴むと、「縄を持ってこい!」と外に向かって怒鳴り付けている。
バタバタと治療室に人が入る足音がして、男性が取り押さえられた。
何事だろう。
この男性はなにが目的だったのだろうか?
取り押さえてくれた男性が近づく。
結界を解く。
「危なかったな、多分、この地域の他の治療院に雇われたごろつきだ。大方、回復魔法士の腕を折るなどして、治療を辞めさせることが、目的だったと思う。午前中だけでここには大勢患者が来たからな、早めに潰しておきたかったのだと推測する」
「そんなことで、私が襲われるのですか?」
「そんなことだが、治療院としては死活問題だ、腕のいい回復魔法士は根こそぎ、その地域の患者を奪うこともある」
「奪うとは穏やかでないですね」
「まぁ、言葉の違いだ。いずれそうなる可能性があった」
「はぁ、なんだか難しいですね。これからもこうしたことがあると困るのですが」
「これからは、冒険者ギルド側でも気を付けるだろうし、こうしたことは起こらないはずだ」
「まぁ、次の患者さんがいるので……今回はありがとうございました」
「なにかあったら外に助けを求めてくれ、必ず誰か助けてくれるはずだ」
暴れていた男性が、縄でぐるぐる巻きにされて、連れていかれる。
恐ろしいこともあるんだな。
患者の奪い合いか。
腕のいい回復魔法士と認められるのは嬉しいが、これはないな。
しかし、どこに行ってもこうしたトラブルはつきまとうだろう。
だったらここで頑張るまでだ。
絶対に負けないと、気合いを入れて、次の患者を呼び込む。
次々に患者が来る。
切れ目がない、しばらくすると切り傷のある患者が目立つようになった。
外を見ると、少し明るさが控えめになっている、夕方かな。
マッチョ率が高い。
そして、YESタッチだ。
軽く患部のそばに触れて、ヒールと唱える。
患者さんたちが、一様に驚く。
銀貨が集まる。
夜になったところで、患者さんがいなくなった。
お金を冒険者ギルドに預けて、宿屋に帰った。




