青紙と飼い猫
僕は、一軒家に住んでいる血統書付きの猫だ。
毎日、「睡眠・起床・食事・遊び」の繰り返し。
この生活を羨ましいと思う人間も居るだろうが、デメリットもある。
それは、この一軒家に死ぬまで缶詰状態という事だ。
温泉やパチンコ、競馬にも行けない人生でいいのだろうか。
とはいえ、外界の環境は厳しいから嫌だ。
暇を持て余していると、来客が訪れた。
青紙を咥えた野良猫が窓の外に居たのだ。
「青紙を届けに来ました、おめでとうございます」
「は?」
思わず疑問の声が漏れた。
「青紙を知らないのですか?」
「知らん」
「世間知らずですね。これは、戦争の招集状ですよ。」
まさか、初対面の猫に戦争に誘われるとは思わなかった。
「そうか、断る。」
「は!?」
相手は、顔面蒼白だった。
「非国民か!? 歓喜しろよ!」
「喜ぶ・・お前、馬鹿なのか? 自分の生活が第一なんだよ」
「無礼極まりない・・正気か!?」
呆然とする野良猫には目も向けず、主人の方に歩き出した。
主人が横になっているベッドに飛び乗ると、飼い主と目が合う。
「お友達の猫でも出来たの?」
「ニャー」
「ふふ・・そっか」
僕は、今日も主人の胸に顔を埋める。
平和が一番だ。