アンコール NO.9
君のことが好きになったのは、いつからだったかな。
最初はカッコよくていい人なのかなって、ただ芸能界の先輩として尊敬してるだけだった。愛璃の何倍も遠いところで輝いている君は、元々恋愛対象じゃなかったはずだから。
君が何を考えているのかわからなくて、勝手に嫌いになりそうになったこともあったっけ(笑)
……君に告白されて、自分の気持ちの鍵を開けるまで“好き”って認められなかった愛璃を、君は許してくれる?本心を隠して1度は君をフッてしまった愛璃に、君は今も変わらず接してくれる?
それもこれも、NYに来てしまった今では、考えることすらムダだけど。
愛璃が君に“恋”した瞬間は、きっとあの時──
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──放課後、ボイトレ中。
今ではテレビや映画の仕事も増えた愛璃だったが、やはり本業は“アイドル”。どのレッスンが増えても、ボイトレの時間は1度も削らなかった。
時計の針は19時を過ぎていたけれど、ライブが近いのもあり、もう少し練習したくて歌い続ける。
が、そうしているうちに自身の身体に起こっている異変に気付いた。
(なんか……フラフラするような?)
そう感じた時にはもう遅く、気付かないうちに愛璃は意識を飛ばしてしまっていた。
──数時間後。
愛璃が目を覚ますと、誰かの膝の上で横になっていることに気づく。
「あっ……気が付いた?ごめんね、勝手に部屋の中に入って。でも、倒れてるの見つけてほっとくわけにもいかなくて。もう体調は大丈夫??……って、そんなわけないか。」
膝枕をしてくれていた“君”は、なんでもないかのような顔をして、いつも通り愛璃に話しかけてきた。
「なんで愛璃……膝の上で寝てるの……?」
「自分の体調よりそっちの心配!?床の上に寝せるわけにはいかなかったから……しかたなくだよ!」
意識がはっきりしていくにつれて、今の自分が置かれている状況の重大さを理解し、顔が火照るのを感じた。
(男子に膝枕されるなんて……愛璃たち芸能人なんだから、スキャンダルになりかねないよ!?っていうかそれ以前に、普通に恥ずかしいんですけど/////)
それを“君”に気付かれたくなくて、意識して普段通りの態度をとる。
「……もうすぐソロライブがあるから練習ちょっと詰めてたんだ。今日は朝からなんかだるいなーって思ってたんだけど、まさか倒れるなんて。心配かけてごめんね……」
「ホント、自分にストイックだな(笑)……けど、自分の体調もっと大切にして。体調こじらせてライブ自体中止になっちゃったらどうする気なの?ファンの皆も……俺も悲しいよ。」
そう言うと、少ししゅんとした表情を見せる。ふと、こんな表情を見ることはめったにないな、と思った。
「ほらっ、早く家に帰って休みな?もう夜も遅いし。」
そう言われたため時計を見ると、もう21時を回っていた。
「うわっ、こんなに寝ちゃってたの!?私なんかのために時間使わせちゃってごめん!!」
申し訳なさで目に涙をためながら謝罪すると、“君”は急に恥ずかしそうな顔をして、とても小さな声で呟いた。
「……愛璃だから、だよ。」
その瞬間、愛璃のなかで、コトンッ、という音がした。
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今思い返してみると単純かなって思うけれど、あの時の“君”は、ステージで歌っている時にも負けないくらい、キラキラ輝いていたんだ。
今も私の心の中には、“君”への──
“折下影人”への恋心が閉じ込められているんだ。
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