アンコール No.1
空港特有のざわめき。それは、数時間前に聞いた物とほぼ同じだった。けれど、隠しきれない非日常感。なぜなら、ここは──
「ニューヨーク、だあぁ……!愛璃、初めて海外来ちゃたよお!!」
そう。ここは、日本ではなくアメリカ、ニューヨーク。ざわめきも、耳をすまして聞いてみると、外国語が重なって構成されたものだ。
澄原愛璃は、アイドルとしての活動拠点移動のため、ニューヨークに来ていた。
「……あ、見つけた!愛璃!ボケっとしてないで、早く移動するわよ。今日の仕事はオフだけれど、そのかわりやらなきゃいけないことがたっくさんあるんだから!」
少し呆れ顔で愛璃に声をかける、愛璃のマネージャー中島景子。
そんな中島に、愛璃は無邪気な笑顔を見せた。
「えへへっ、すみません♪え〜っと、今日は、KTプロダクションの海外支部に顔を出して、プロダクションが経営しているアパートに荷物を置いたあと、愛璃と同じくニューヨークに活動拠点を移した先輩アイドルユニット、「StarLight」のライブを見に行くんでしたよね……?」
「そうよ。「StarLight」は、ニューヨークでも代表的なアイドルグループって言われてるぐらい有名だから、愛璃の勉強になればなって思って!」
話しながら、歩みを進めていく中島。
(中島さんは、いつも愛璃のこと1番に考えてくれてる。今日だって、事務所で用事があるからって愛璃を先に飛行機に乗せたけど、愛璃が空港で1人途方に暮れる時間ができないように急いで愛璃のところに来てくれたんだもんね……)
中島に尊敬の眼差しを向けながら、愛璃はその後ろを駆け足でついて行った。
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いつもと違う光景に飲まれているうちに、ライブ前に済ませなければいけない用事を全て終えてしまった。そして今愛璃がいるのは、武道館と同じくらい大きな、ライブ会場の中だった。
「うわぁ……すごい……!まだライブが始まる前なのに、すごい熱気……!!」
周りの熱気にのまれて、愛璃も自然にテンションが上がっていく。それを見た中島は、いたずらな笑みを愛璃に向けた。
「ふふ、そうでしょう。でも、ライブが始まったらこんなもんじゃないわよ。……ほら、「StarLight」の5人が出てきたわ!」
中島のその言葉を合図に、周りの歓声がいっそう強くなった。愛璃がステージ上に目を向けると──
「Wait a minute, everybody! I'm Suzu, the leader of StarLight!(みんなお待たせ!「StarLight」のリーダー、スズです!)」
「You wanted to see us, didn't you? I'm Daria!(俺たちに会いたかったんだろ?ダリアです!)」
「We were looking forward to seeing you guys too♪ I'm Buran!(僕たちも君たちに会うのを楽しみにしてたよ♪ブランです!)」
「Nice to meet you again today. I'm Kurame.(今日もよろしくね。クラメです。)」
「I'm Sechia! Let's get excited!!(セチアです!
さぁ、盛り上がっていこうぜー!!)」
「StarLight」の5人が、ステージ上で星のような輝きを放っていた。
Twitter⇒@Cocona_Sakuhana(作花 恋凪)
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