盲点
第8話「盲点」
あぁ、神様、俺は気づいてしまった。
実は領民の食文化がとても乏しいということに!
きっかけはバレないようにフードを被り、城下町を散策している時だった。俺は一軒の屋台を見つけた。
「こんにちは。」
「おう、兄ちゃんどうした?まだ、開店前だぞ。」
「すいません、なんのお店なのか
知りたくて。」
「おう!ここは、弁当屋だ!握り飯から
焼き魚、なんでもあるぜ!」
「なんか味見させてくれない?
おじさんの作るのなら絶対おいしいと思うんだ。」
「はっはっはっ!口の上手い兄ちゃんだ!特別だぞ。」
おじさんは、俺に握り飯をくれた。
どんな味かとワクワクして食べてみる。
「おい、ふざけているのか?」
「あ?なんだと?」
「なんだこの味は!まるで具材を適当にぶち込んだだけの物じゃないか!」
「なんだと!」
おじさんが店から身を乗り出す。
「...すまない。少し取り乱してしまった。
これはお前の自作か?」
「そうだ!!俺の自信作だ!」
ドヤ顔をするおじさん、殴りたい。
「ふぅ、まさかこんな所に問題が潜んでいたなんて盲点だった.....よし、俺直々に指導してやる!米を見せろ!」
「おう、これがうちで使っている米だ」
...米に問題は無さそうだな。ならば次は。
「塩はあるか?その他具材もあれば出せ。」
「おらよ」
ズラリと並べられる沢山の具。
「これを全部入れたのか?」
「そうだ!」
....よく、弁当屋できたな。
「よし、ちょっと待ってろ。」
まずは、普通の塩握り。
形を軽く整えるくらいに優しく握る。
.....よし、いい感じだ。
次に、しゃけ、ご飯と具材を半々くらいで握る。.....こっちも成功。
「よし、食べてみろ。」
出来立てほやほやの2つのお握りを渡す。
「!!!!!!」
「う、うまい!ふっくらとしたご飯と塩が奏でる絶妙なハーモニー!香り豊かなしゃけとご飯のベストコンビ!なんて上手いんだ!」
「お、おう。ありがとう。」
なんかリアクションオーバーじゃね?
怖いよ〜ガクブル。
「兄ちゃん、いや、師匠と呼ばしてくれ!俺が馬鹿だった!どうか俺に料理を教えてくれ!」
「分かった!分かったから!
まず、あんたの名前は?」
「あぁ!俺の名前はイスラ!よろしく頼むぜ!師匠!」
「そうか。じゃあ、イスラ、次くるまでにそれと同じものを作れ。それが出来れば考えてやろう。」
「分かったぜ師匠!」
.....ふぅ、めんどくさそうな奴と知り合っちまったな。
まぁ、出来なければ、教えず逃げれ
ばいいか。
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あれから1週間が過ぎた。さて、イスラは作れたかな?
「おーい、イスラ、出来たか?」
「へっへっへっ、どうだ!!!」
おぉー、凄い。ふっくらとした握り方、
ご飯と具の割合、全て完璧だ。
「成長したじゃないかイスラ。」
「はい、あれから試行錯誤を繰り返してやっと完成しました。それで、師匠、次の料理を教えていただきけますね?」
「あぁ、教えてやる。材料は鍋一杯の油に
鶏肉だ。用意出来そうか?」
「こんなこともあろうかと用意してあります!」
な、なに、こいつ、俺の「人生で一度は言いたい言葉ランキング」第3位の言葉を口にするなんて..羨ましい。
「そ、そうか。では始めよう。」
冷静に冷静に.....
「今回はかなり簡単だ。だが、美味い!
そんな料理だ。」
「して、師匠、その料理の名前は?」
「唐揚げだ。」
「よし、まずは、油の入った鍋を加熱する。
イスラ、火魔法は使えるか?」
「はい」
む、無詠唱だと.....
「次に、鶏肉を熱した鍋の中に入れる。以上だ。」
「え?これだけ?」
「そう。これだけだ。だが、美味いぞ。」
よし、そろそろ良いだろう。
「熱いから気をつけろよ?」
「はい.....」
おそるおそる、唐揚げを口に運ぶイスラ。
そんなビビらんでも平気だよ?
「う、うまい!!!サクサクとした鶏肉の表面から肉汁が溢れて最高だ!!!!!」
「さて、これを前教えたお握りと一緒に売れば、きっと繁盛するだろう。もうお前に教えることはない。」
「ゔっじ、じじょゔありがどうございばじだ。」
おいおい、涙声でなんて言ってるかよくわからんぞ。
「せめて、お名前を.....」
「そういえば、名乗ってなかったな。
俺の名前は鈴木。現魔王鈴木だ。」
「なっ!まさか、俺は魔王様直々に料理を教えていただいたというのか....」
「はっはっはっ!そういう事だ。これからも 励めよ。」
「はい!!!!」
「では、さらばだっ!!!」
俺はフードを翻し、今はもう暗くなってしまった夜の街へ消えていった。
.....やっべー、超恥ずかしい///