第55話 僕はその光景を目の当たりにする。
4話投稿の2話目。
なろうの性描写の限界に挑戦?
セーフ……ですよね?
銀盤に映し出されたファルカスは血を吐いて崩れ落ち、レクシーに支えられていた。
「お、デブス。ナイスキャッチ」
「信じられない……
あのレクシーが自分の服が汚れるのも承知で他人を助けるなんて」
ブレイドとメリアは銀盤に映し出される光景に、合いの手を入れたり、感想を呟いている。
なんだか、妖精たちが僕に語りかけてくる状況とよく似ている。
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【転生しても名無し】
『おい、それじゃあまるで俺たちが盗撮動画見ながら実況している下世話な連中みたいじゃないか』
【転生しても名無し】
『あながち間違ってはいない』
【転生しても名無し】
『少し罪悪感を感じる』
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もし妖精が僕みたいなホムンクルスじゃなく普通の人間に取り憑いたとしたら、羞恥心で発狂するのではないだろうか。
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【◆江口男爵】
『虫に裸を見られて恥ずかしがる女はいないだろう。
そういうことだ』
【転生しても名無し】
『そうだ! 俺たちは虫だ!
だから気にしないで!
これからも俺たちのホムホムでいて!』
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お前らのものじゃない。
「でも、クルスの発想には感銘を受けたね。
荊棘の呪術で身体強化とか、それの反動でダメージとかドラマチックな演出だよな」
「思いました! サンタモニアにはこんな魔術あるんですか?」
ブレイドとメリアは興奮気味に僕に尋ねてくる。
僕の発想じゃなくて、アニーの発想なのだが……
「さあな。僕は聞いたこともない。
だが、フローシアならそれに近い魔術も使えるんじゃないのか。
理屈は魔法陣を人体に移植しているようなものだ」
僕の説明に得心がいったように二人は銀盤に目を落とす。
『あなたは、とてつもなく魅力的だ』
「えっ!?」
「おっ!」
ファルカスがレクシーの手を舐め始めた。
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【転生しても名無し】
『キター!!』
【転生しても名無し】
『ファルカス選手、一気に決めにかかった!』
【◆バース】
『緩急つけた巧みな投球術にレクシー嬢は手も足も……出しとるwww』
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「ちょ……これって、そういうことする空気ですか?」
「ほーう。そういうことってどういうことかなあ?
お兄さんに聞かせてごらん。
アホガキちゃん」
顔を赤らめて慌てふためくメリアをからかうブレイド。
メリアは顔を手で覆って、銀盤の前から離れる。
銀盤に映し出されたファルカスとレクシーは互いに舐め合い始めた。
「これは何をしているんだ?」
「んー。そうだなあ。
愛情を確かめ合っているってところだな。
ほら、お前バルザックにほっぺたにキスされた時反射的に手が出たろ。
愛情がないとああなるけど、お互いに愛し合っていればこういうふうに互いに舐め合う」
なるほど。
ファルカスがレクシーの上に乗り、二人は唇を合わせた。
さらに体をよじらせながら貪るように唇を合わせ続ける。
舌と舌が絡んでいるように見える。
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【転生しても名無し】
『あーあ、ホムホムの目を通して初めて見る濡れ場が他人のもの……しかもファルカスとレクシーか……
ちょっとガッカリ』
【転生しても名無し】
「水差すんじゃねえよ。
そもそもこれは作戦の一環だしな」
【◆江口男爵】
『ここからがファルカスの一世一代の大芝居だな。
レクシーの心をとかし尽くすような【自主規制】ができるのか』
【◆アニー】
『それなんだよね。
中世の【自主規制】って男主体で女を愉しませる心遣いに欠けてるって聞いたことがあるし』
【◆オジギソウ】
『でも一座の女子たちがファルカスの【自主規制】を奪い合うようなことしてるし、やっぱアッチの方も名優なんじゃない?』
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妖精たちの興奮がファルカスとレクシーの動きが激しくなるのに比例して、いつになく高まっているのが分かる。
そして、ファルカスとレクシーは互いに着ている衣服を脱がし始めた。
「ブレイド。互いに舐め合うのが愛情の確認だとしてもこれは箇所的に不衛生じゃないか?」
「……そ、そうだなあ。汚いといえば汚いが……当人同士が許し合えているのならいいんじゃないか」
最初は細やかに説明してくれていたブレイドの舌の滑りが悪くなっている。
「これは痛くないのか? 内臓を攻撃しているようなものだが」
「あ、ああ……たしかにコレは痛いだろうなあ……ハハ……」
「レクシーが痛みに耐えかねて声を上げているぞ。
拷問の一種か?」
「拷問……まあ……そうかもなあ……」
「ブレイドもククリとこういうことをしているのか?」
「お……おう……
まあ……同じことをしているつもりだけど……」
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【転生しても名無し】
『やめたげて! ブレイドニキの男の自信はもうゼロよ!』
【転生しても名無し】
『てか、ファルカスニキすげーわ……
あんなもんぶら下げて大立ち回りしてるってもう筋トレだぞ』
【転生しても名無し】
『拷問かw言い得て妙だわw
あんなもん突っ込まれたら死ぬwwww』
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妖精たちは相変わらず、というかいつも以上にイキイキしている気さえする。
ブレイドは眠くなってきているのか目が虚ろになっている。
メリアは耳を塞いでそっぽを向いている。
ずっと無言のイスカリオスは銀盤を見つめてはいるものの、猫背になって頭を抱えている。
周りのみんなの挙動がおかしいのを見ていると平然としている僕がおかしいように思えてくる。
銀盤に再び目を落とす。
ファルカスは芝居の時に見せていたような物憂げで切ない表情を浮かべており、レクシーは涙を流しながらもどこか満足げな表情を浮かべて、互いに体を結び合っている。
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【転生しても名無し】
『この速さなら言える!
俺さあ、レクシーのことデブス呼ばわりしてたけど……
今、「結構アリじゃね?」って思い始めてる』
【転生しても名無し】
『同志よ。俺もだ。
割と裸にしてみると、デブというより豊満なぽっちゃり体型だと思える』
【転生しても名無し】
『お前たちとは美味い酒が飲めそうだ。
いや、やっぱ女はこれくらい肉感的な方がいいよ』
【転生しても名無し】
『私女だけど、嫉妬でカムチャッカファイヤーな位レクシーが羨ましい。
こんな【自主規制】してみたい!
覗かれるのは嫌だけど!』
【◆アニー】
『手前みそでアレだけど、シチュエーションが良すぎるわ。
明日のどうなるか分からない男女が感情の赴くまま契りを交わすって……素敵やん』
【◆江口男爵】
『アニー。お前がいてくれたことに俺は感謝しているよ。
アニーMy LOVE』
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妖精たちの言っていることは時々よく分からない。
ただ、ファルカスにレクシーが心を奪われたのは間違いないようだ。
作戦の成功まであと少しだ。
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【◆与作】
『でも……ちょっとだけレクシーがかわいそうに思えてきた』
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楽しそうに騒ぐ妖精たちの喧騒の中で与作の言った一言が僕の思考回路の隅に残った。
太陽が雲に隠れたまま穏やかに夜が明けた。
裸のままベッドに横になっているレクシーはファルカスの腕に頭を預けている。
結局二人は一睡もしないまま体を重ね続けていた。
「ファルディーン様……私はもう死んでも構いません」
「レクシー殿……」
「レクシーとお呼びください」
ファルカスは小さく微笑んで、
「レクシー」
と彼女の耳元で小さく呟いた。
レクシーは顔を赤らめてファルカスの胸元に顔を押し付けた。
その時、銀盤を見ている僕とファルカスの目があった。
彼は声を出さずに唇で、
『そろそろフィナーレです』
と伝えてきた。
ぐったりしているブレイドたちに僕は声をかけて、銀盤を注視するように促す。
「実は、ローリンゲン家に使いを送っていました。
ローリンゲン家での安全が確保できれば、私に伝えにくるように命じていたのですが……
どうやらローリンゲン家も奴らの手に落ちていると思います」
「そんな!?」
「奴らは想像以上に狡猾で強大です。
私は負けてしまったようですね」
ファルカスは自嘲気味に笑う。
「負けてなんて……もう、奴らは潜入者の括りではありません!
ソーエンからの襲撃者として、国軍に出動を要請しましょう」
「それは難しいでしょう。
ソーエン国はハルモニアに属していないが帝国に軍事協力してくれている。
帝国の前線にソーエン出身の一騎当千の武人たちが配属されているから魔王軍を押し止められているんだ。
我々の命など天秤にかけるまでもなく切り捨てられるでしょう」
「そんなことはありません!
私の命はそんなに軽いものじゃありません!
私の命がかかっているとあのお方に伝わりさせすればーー」
「侯爵様ですか。失礼ながらローリンゲン侯爵にそこまでの発言力はありません。
貴方の婚約者であるイスカリオス様も奴らの手にかかった今、ソーエンとの不和を覚悟で国軍を動かす権力者などーー」
「いらっしゃるのです!」
レクシーは胸元を掛け布団で隠しながら体を起こす。
「ファルディーン様……
貴方様の前で私、隠し事は致しません。
帝国とローリンゲンの名に誓います。
私は……ただの侯爵令嬢ではないのです。
故に賊に命を狙われたのでしょうが……」
レクシーはなにかを振り切るように首を振って、ファルカスを見つめる。
「私は婚約者のイスカリオスが所有している私兵組織を牛耳っていました。
彼は強力無比な軍人ではありましたが、情が深く、手駒を切り捨てきれない甘さがありました。
そこをつけこんで彼の手足を縛ったのです」
ファルカスは驚いたような表情で、
「ご冗談でしょう?
たとえ、貴方が侯爵家の令嬢でイスカリオス将軍の婚約者だったとしても、彼が手を回せばどうにでもーー」
「私は守られていたのです。
だから彼もうかつに手を出せなかった。
ある御方が私の後ろ盾……いえ、私もあの御方の手駒の一人なのかもしれません。
ですが、あの御方ほど、この国を思っている方はいらっしゃいません!
きっと賊を殲滅するため立ち上がられることでしょう!」
「国を思っているのなら最大戦力の将軍の手足をもぐような真似をするのかねえ。
こんな状態が続けばこのオッさん精神的に追い詰められて腹を切るよ」
「オッサン……切るか!」
ブレイドの軽口にイスカリオスは声を荒げる。
「大声出すなよ。隣に聞こえるぞ」
「ぐっ……」
歯ぎしりをするイスカリオス。
呆れつつ、僕はレクシーの言葉に耳を傾ける。
レクシーは意を決した表情で、
「私にイスカリオスの私兵組織を乗っとるように指示を出していたのはーーーーーー」
……………………
レクシーの口から出たその人物の名に、僕たちは言葉を失った。
ファルカスも唖然としている。
誰もが僕たちの置かれている状況を理解できていなかった。
「……もうどうでもいい。
どうでもいいぞ! こんちきしょおおおおおお!!」
ブレイドの叫びが部屋に響き渡る。
レクシーにも聞こえたらしく、キョロキョロと辺りを見回している。
「クルス……あの女ふんじばれ。
もう小細工は抜きだ。
サンタモニアの動向もあるのにこれ以上時間かけていられねえ!
オッサン! 文句ねえよな!」
イスカリオスは無言で首を縦に振った。




