閑幕 そのころの騎士たちは
シルクが無事逃走した後の騎士達は、この先待っているであろう自分たちの処遇に意気消沈していた。
今何を考えてる? と聞けば、必ず『ラズリ様に殺される事』と答えるであろう。
みんな国王の命令に従った事を各自後悔していた。
権力的には国王様なのだが、力の関係では圧倒的にシルクの弟である、ラズリが有利なのだ。
「どうするんだよ……姫様逃げちゃったよ」
「どうするもこうなってる以上どうする事もできないだろ。はぁ……ラズリ様、絶対楽な死に方させてくれないよなぁ……」
「重度のシスコンだもんな。しようがないって言えばしょうがないけど。あの姫様の美しさじゃ無理もない」
「それだけじゃないだろ。王子は『あの事件』の事もあるから、シルク様の事になると必要以上に過保護になってしまうんじゃないか」
「かもな……」
「姫様大丈夫かな? アカデミーに入っていたから、その辺の温室育ちの姫と違って町とかも慣れてるだろうけど」
地味に少しずつ氷を削っていたおかげで、片足がやっと出た騎士もちらほら見える。
彼らは忘れてしまっている。この状況を一発で打開出来る人がいる事を――
「……なあ」
「なんだよ」
「これバーズ様の持精霊、ウィル様の力があれば簡単に砕く事できるんじゃないか?」
「……。」
「早く言えよ!!」
思い出した人がいたが、そこには難問があった。
バーズは日頃の運動不足の為、階段で息を切らしていたのだった。
ウィルに直接頼めばいいんだが、精霊を見たり話したりする事が出来るのは、ハイヤードの王族だけなので無理だ。
そのため、そこで湧きあがったのは勿論国王コール。
しばらくすると、騎士に背負われてバーズ様がやってきた。
いつも優秀すぎる自分の息子にばかり評価がいき、自分に対する声援などこのところまったく聞かなかった国王は目にうっすらと涙を浮かべている。
あまりの嬉しさに、彼には現状が見えていなかった。
「お前達、そんなに私の事を……」
「国王様! そんな所で立って涙ぬぐってる場合じゃないですよ!!
ウィル様のお力で早くこの氷をなんとかして下さい。姫様に逃げられてしまいました」
「なんだと!? お前たちなぜ追わない!?」
「これじゃあ、追えるわけないじゃないですか!!」
国王様はやっと自分の置かれている現状を理解したよう。
すぐさま持精霊ウィルを呼び出し氷を砕くように命令するれば、何処からともなく竜巻が起こり人を巻き込まずに氷だけを砕いていった。
「これで追えるだろ。早くシルクを捕まえてなんとしても結婚させるのだ!!」
「まだ言ってるんですか!? 姫様それで逃げてるんですよ。それにそんな事したらラズリ様に殺されてしまいますって」
「シルクはなんとしてでもあやつの息子と結婚させる!!」
「だから――」
「そうしなければ……シルクは……わしの娘は殺されてしまう。だから何としてでも、ディル派と関係ない国と結婚させて逃がしてやらなければならない――」
国王の顔はみるみるうちに苦痛の表情に変わる。
さすがに騎士達は事情は分からないまでも、何かあると思ったのか二・三人国王の元に残して急いで馬で姫の後を追った。